統計資料で遊んでみる5

このシリーズのまとめ、というよりは、補足、蛇足、余談になるかもしれません。
 
介護保険の給付対象から軽度者(要支援、あるいは要介護1以下、過激な主張としては要介護2以下)を外そうとする意見は、財政関係者だけでなく、財界トップからも出されたりします。
 
それに対して、
「軽度のときにしっかりケアすることで重度化を防ぐ。そうすれば、お金も逆にかからないのではないか。」
「軽度を切り捨てれば、なおさらお金がかかるのではないか」
「生活援助と並行して生活機能向上の支援を行うことによって重度化防止ができる」
「軽度者の介護予防は、高齢者の自立による尊厳と介護保険制度の安定運営のかぎである。」
など、まともな意見も審議会で出されていることは、こちらのリンク先と、その前の数記事で触れました。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/28727554.html
 
その根拠のデータを提示、というよりは、
根拠のデータを出すにはどういう方法が考えられるか、
という観点で、ここまで書いてきたつもりです。
 
重度になるほど、受給者(認定者ではない)1人当たりの利用額(*償還払いを除く)が格段に多くなることも、
「軽度を切り捨てれば、なおさらお金がかかる」という論拠のひとつでしょう。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31862607.html
 
反対意見はあると思います。
たとえば、切り捨てられた軽度者の全てが重度化するわけではない、と。
 
私もそう考えます。
でも、こちらの表の左端のように、全く「影響なし」ということはないと思います。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31862673.html
 
現在の軽度者を、いくつかに分類するとします。
 
1)サービスを利用して介護度を維持改善している人々
2)サービス(*)を利用しなくても介護度が維持改善できている人々
3)サービスを利用せず、介護度が重度化する人々
 
2の人々は(*印については後述)、本人の体質、生活習慣、家族等の支援など、さまざまな条件がプラスに働いたと考えられます。
(この介護予防に適した「生活習慣」については、調査・分析していく価値はあると思います。)

3の存在は残念ですが、虐待時の措置などを除いて、周囲が無理やりサービスを受けさせることは困難です。
 
1の中には(審議会委員等も納得しやすい例を挙げれば)介護予防通所リハビリも含まれますから、サービスを使えなくなると重度化する人々の割合は、絶対にゼロにはなりません。
だから、現在の軽度者への給付額をもって「削減の経済効果」とする主張があったとしても、それは成り立ちません。
 
あ、一部の御用ガクシ・・・じゃなくて、財政当局や財界の考え方に近いシキシャは、上記以外に
「サービスを利用したがために、かえって介護度が悪化する人々」
というカテゴリーの存在を主張するかもしれませんが、これは無視してよいと思います。
こちらの記事で推計したように、要介護1で月8.6時間、週のうち2時間余りだけの生活援助が廃用症候群を作るというのは、無理がありますから。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31868253.html
 
「1)サービスを利用して介護度を維持改善している人々」が、介護保険からサービスを受けられなくなった場合、それでも心身の状態や生活状況が悪化しなかったとしたら、それは家族の支援があったり、民間の有償サービスを利用したりということが主因でしょう。
 
家族や、経済状況に余裕があればよいのですが、そうでない場合には弊害が出ます。
家族が、いわゆる常勤から非常勤、あるいは退職となると、企業の人材確保にも支障が出ます。
個人の給与所得が減ると、年金などを含めた社会保障費用などにも影響を及ぼすでしょう。
(たぶん、こういう問題は、財界トップも認識していません。)

最後に、*印について。

「1人当たりの利用額(*償還払いを除く)
と書きましたが、多くの自治体では住宅改修費や福祉用具購入費は償還払いです。
つまり、軽度者(どの介護度で線を引いても)が介護保険の給付から除外されると、住宅改修や福祉用具購入も対象外となります。
 
「2)サービス(*)を利用しなくても介護度が維持改善できている人々」
の中にも、住宅改修などは使って、あとは本人の努力や家族介護などで在宅生活を維持している人々はいるでしょう。
 
手すりの設置や、洋式トイレへの変更(できればウォッシュレット付き)などは、軽度者にも効果がある
というより、軽度者ほど効果が高いといってもよいかもしれません。
 
こんなものを介護保険から除外するのは、制度の(ほとんど)自殺行為です。
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統計資料で遊んでみる4

前記事までの続きで、
「平成23年度 介護給付費実態調査の概況(平成23年5月審査分~平成24年4月審査分)」より
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/11/index.html
 
訪問介護について、こういう資料があります。
 

イメージ 1

 
赤色などでの書き込みは、引用者が行いました。
 
要するに、「重度者は身体介護の利用が多く生活援助の利用は少ないのに、軽度者は生活援助の利用が多い」という資料のようです。
でも、これは、各介護度での利用割合なのです。
要介護1と要介護5の利用の絶対額を比較したものではありません。
 
そこで、その元データを、「介護給付費実態調査月報(平成24年4月審査分)」から探してみました。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/2012/04.html
 
対象は、上記「図5」と同じ「平成24年4月審査分」なので、サービス利用月は(ほとんどが)24年3月。
したがって、報酬改定前、つまり生活援助が「所要時間45分」という妙なところでぶった切られるようになる前です。
 
イメージ 2
 
サービス利用回数のデータから試算したもので、たとえば「所要時間30分未満」は25分と、「1時間未満」は55分というように、上限より5分短い数値を仮置きしています。
なので、厳密に正確な時間数とはいえませんが、大まかな傾向をつかむのには十分と思われます。
なお、「身体+生活」は、適宜、それぞれに分解して計算しました。
 
結果を見ると、予想していた以上に美しいグラフになりました。
身体介護は重度になるほど利用が増え、生活援助は要介護2から要介護3にかけてをピークとする緩やかなカーブを描きます。
 
重度になるほど独居者は減ると考えれば、要介護4~5で生活援助が少なくなるのは理解できます。
それにしても、上の図5のイメージほど極端な差はありません。
 
「日本のケアマネやヘルパーが、全体としては健全でまともな仕事をしている」ということが如実にわかる美しいグラフです。
(中にはおかしげなケアマネたちもいるでしょうが、それを言い出せば、政治家や公務員も同じことでしょう。)
 
本来、下の美しいグラフになるはずが、上の不細工なグラフを作ったところに、厚労省職員のいびつな才能を感じないでもありません。
 
軽度者の生活援助利用を悪者にしたいがために、こんな資料を作ったのですか?
 
・・・という話はともかく、このシリーズは、もう少し続く・・・・・・かもしれません。

統計資料で遊んでみる3

前記事の続きです。
 
イメージ 1
 
要支援2以下を介護保険の給付から除外すると、サービスを利用して心身の状況や生活を維持していた人たちが重度化するかもしれません。
そうなると、かえって要介護1以上の給付が増え、介護保険財政が悪化するかもしれません。
 
同様に、要介護1以下を切り捨てた場合も、要介護2以上が増大する可能性があります。
 
イメージ 2
 
切り捨てられた軽度者が、どれぐらい重度化するかは難しい推計ですが・・・・・・
 
・影響なし(全く重度化しない)
・全て重度化(便宜上、ひとつ重い介護度に移行)
 
この2つの推計の間のどこかになるでしょう。
 
要支援2以下を除外するなら、受給者の4割弱が重度化すれば、総費用はかえって増加する
という計算になりました。
「認定者の4割弱」ではなく、介護予防通所リハビリなどを含む「サービス受給者の4割弱」ですから、
起こり得る仮定だと思います。
 
ちなみに、要介護1以下の切り捨てなら、「採算ライン」は5割弱の線です。
 
もちろん、「採算が合った」としても、
切り捨てられた人々が生活の質の低下に苦しむ
という悪影響は避けられないでしょう。
 
(たぶん、もう少し続きます。)

統計資料で遊んでみる2

前の記事で紹介した統計の中で、ちょっと気になる資料があったので、もう少し詳しいデータを探してみました。
 
介護給付費実態調査月報(平成24年4月審査分)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/2012/04.html
速報版ですが、大雑把な傾向を見るには十分でしょう。
 
イメージ 1
 
平成24年4月審査分なので、概ね3月のサービス利用分と考えていいでしょう。
 
仮に要支援2以下を介護保険の給付から除外したとすると、直接的には、総費用額の5.4%が減るということになります。
たった5.4%、という見方もできます。
 
要介護1以下を切り捨てると、ようやく17.7%が減らせる、ということです。
 
ただし、減らした分だけ介護保険財政が楽になる・・・・・・とは限りません。
 
(つづく)

統計資料で遊んでみる1

国のサイトには、いろいろな統計資料が出ています。
 
平成23年度 介護給付費実態調査の概況(平成23年5月審査分~平成24年4月審査分)というのを見てみました。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/11/index.html
 
イメージ 1
 
平成23年4月に要介護(支援)認定を受けた人が、24年3月にどうなったか、という資料です。
以前にも触れたことがありますが、要介護から要支援に戻る人もけっこうありますね。
要介護1と要介護2との行き来も、相当にありそうです。
 
どこに線を引こうと、いわゆる軽度者を介護保険から合理的理由で除外することは、
はっきり言って無理
 
だと思います。

伝達と報告についての蛇足

前記事で触れた、訪問介護の「特定事業所加算」の要件ですが、あまり出来がよくないとは思っています。

ただ、なにがしか法令遵守意識の高い方々に見られる現象ではありますが、
「こんな加算を取れる事業所はない」という考え方に対しては、私は賛同しません。

全ヘルパーが、少なくとも「携帯メールの受信ができる」という条件を満たさないと厳しいとは思いますが・・・

訪問介護の報酬については、生活援助などを中心に、相当に酷い状況にはなっています。
ただ、特定事業所加算を算定できるようになっておかないと、
「特定事業所加算を算定している事業所では(現行の単価でも)採算が合う」
などと発言する審議会委員などが現れかねないご時世です。

伝達や報告の内容について、あえて個人的に述べるなら、
「前回のサービス提供時の状況」
というのは、いくらでもあり得ると思います。

・心身の状況(家族を含む)
・他のサービスの希望(住宅改修や、保険対象外のものを含む)
・愚痴、人間関係上のモロモロ
・生活上の話題(クーリングオフ、加湿器が火災の原因か、など)

利用者や家族が口にした、こういうことの中から、ヘルパーやサービス提供責任者が真の課題を抽出するということもあると思います。
 
イメージ 1
 
注:イラストは記事と関係ない場合もあります。

特定事業所加算の(ヘルパーへの)伝達と報告

訪問介護などの特定事業所加算の要件が難しい、という声は、平成21年報酬改定時からありました。
このうち、サービス提供責任者(サ責)からヘルパーへの伝達と、ヘルパーからの報告については、こちらの記事(と、その次の記事)で触れました。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/21808866.html
 
告示上の要件は、21年改定時から24年改定時にかけても変わっていません。
(規定する告示は、平成12年厚生省告示第25号から平成24年厚生労働省告示第96号に変わっています。)



三 イ(2)(二)
 指定訪問介護の提供に当たっては、サービス提供責任者が、当該利用者を担当する訪問介護員等に対し、当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始するとともに、サービス提供終了後、担当する訪問介護員等から適宜報告を受けること。


が、その留意事項通知(平成12年老企第36号)は、24年改定時に加筆されています。
{青色}の部分が追加箇所です。



第二 2(17)ハ
 文書等による指示及びサービス提供後の報告
 同号イ(2)(二)の「当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項」とは、少なくとも、次に掲げる事項について、その変化の動向を含め、記載しなければならない。
 ・利用者のADLや意欲
 ・利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
 ・家族を含む環境
 ・前回のサービス提供時の状況
 ・その他サービス提供に当たって必要な事項
{ なお、「前回のサービス提供時の状況」を除く事項については、変更があった場合に記載することで足りるものとし、一日のうち、同一の訪問介護員等が同一の利用者に複数回訪問する場合であって、利用者の体調の急変等、特段の事情がないときは、当該利用者に係る文書等の指示及びサービス提供後の報告を省略することも差し支えないものとする。
 また、サービス提供責任者が事業所に不在時のサービス提供に係る文書等による指示及びサービス提供後の報告については、サービス提供責任者が事前に一括指示を行い、適宜事後に報告を受けることも差し支えないものとする。この場合、前回のサービス提供時の状況等については、訪問介護員等の間での引き継ぎを行う等、適切な対応を図るとともに、利用者の体調の急変等の際の対応のためサービス提供責任者との連絡体制を適切に確保すること。}
 同号イ(2)(二)の「文書等の確実な方法」とは、直接面接しながら文書を手交する方法のほか、FAX、メール等によることも可能である。
 また、同号イ(2)(二)の訪問介護員等から適宜受けるサービス提供終了後の報告内容について、サービス提供責任者は、文書{(電磁的記録を含む。)}にて記録を保存しなければならない。


伝達や報告の回数については、私の記事(上のリンク)に近い考え方が出されています。
さらに、24.3.16のQ&Aにも、同じ方向性のものがあります。



問13 特定事業所加算の体制要件として、サービス提供責任者が訪問介護員等に対して文書等による指示を行い、サービス提供終了後、担当する訪問介護員等から適宜報告を受けることとされているが、毎回のサービスごとに行わなければならないのか。
(答)
 サービス提供責任者は、サービス提供前に訪問介護員等に対して文書等による指示を行い、事後に訪問介護員等からの報告を適宜受けることとしているが、下図AからCまでに示す場合については、サービス提供責任者が文書等による事前の指示を一括で行い、サービス提供後の報告を適宜まとめて受けることも可能である。
 
イメージ 1



これらは、24年度改定時から緩和されたというよりも、21年改定時からあった(国が想定していた)考え方を明示した、と考えるべきでしょう。
(おおもとの告示の文言自体が変わっていないことに留意。)


では、「当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項」の内容は、といえば、
例示されているもの(その変化の動向を含む)のうち、

*利用者のADL/意欲/主な訴え/サービス提供時の特段の要望
*家族を含む環境

については、変更があった場合のみでもOK。
(「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達・・・」などについては、定期的な会議で行われているはずですし。)

*前回のサービス提供時の状況

は、必須です。
ただ、毎回詳しい情報が必要かといえば、そうでもないと思います。

たとえば、看取り(ターミナル)期の方にとっては、
「お変わりありません」というのも、重要な(そして、ありがたい)情報ではあります。

また、以前にも書いたように、記録・保存義務があるのはサ責ですが(ヘルパーからの報告は文書とは規定されていない)、
「電磁的記録を含む。」と明示されたこともあり、通常の記録(基準省令第19条関係)とは別ものと考えるべきでしょう。
もちろん、この加算は個々のサービスの質の確保を目的としたものであり、
そのために通常の記録とともに保存することを排する意味ではありません。

「押し買い」規制、本日から

消費者庁取引対策課のページより
http://www.caa.go.jp/trade/index.html

「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律にかかる説明会資料」より
(レイアウト等、多少いじっているものがあります。)


特定商取引に関する法律の一部を改正する法律の概要について

~訪問購入規制の導入~ 平成25年2月(第4版)

1.本法律の対象となっている取引類型


(消費者が自ら求めないのに、販売の勧誘を受ける)
1.訪問販売
 自宅等への訪問販売、キャッチセールス、アポイントメントセールス(電話等で販売目的を告げずに事務所等に呼び出して販売) 等

2.電話勧誘販売
 電話で勧誘し、申込を受ける販売

(事業者と対面して商品や販売条件を確認できない)
3.通信販売
 新聞、雑誌、インターネット等の広告による場合など、郵便、電話等の通信手段により申込を受ける販売
★訪問販売、電話勧誘販売、通信販売は原則すべての商品・役務が対象

(長期・高額の負担を伴う)
4.特定継続的役務提供
 長期・継続的な役務の提供とこれに対する高額の対価を約する取引
(エステ、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室が対象)

(ビジネスに不慣れな個人を勧誘する)
5.連鎖販売取引
 個人を販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘させる形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務の販売

6.業務提供誘引販売取引
 「仕事を提供するので収入が得られる」と誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引

(消費者が自ら求めないのに、購入の勧誘を受ける)
7.訪問購入(平成25年2月21日施行予定)
 消費者の自宅等を訪問し、物品を購入するいわゆる「押し買い」


この「押し買い」関係の規制が、今回の法改正です。
(本日、2月21日から施行。)
お年寄りなどから貴金属を無理やり(あるいは、だまして)安値で買い取る、という悪徳業者が問題になっている、あの件です。

詳細については、機会があれば、ということにして(笑)

・訪問の目的、事業者名や訪問者名などの明示義務
・契約時の書面交付義務
・虚偽説明や誇大広告などの禁止
クーリングオフが可能(そのことの説明義務も)

など、訪問販売や電話勧誘などと似た規制があります。

「売らん、帰れ」

と意思表示されたら、業者はそれ以上勧誘せずに帰らなければならない
ということも、憶えておいた方がいいでしょう。

ただし、自動車やCD、書籍など、例外もあるのでご注意を。
(この例外規定については、批判もあるようです。)

吸引等の医療費控除・障害サービス2

(2) 照会の介護福祉士等による喀痰吸引等について

 イ 新たに医療費控除の対象となる介護福祉士等による喀痰吸引等は、これまで医療費控除の対象となっていなかった次に掲げる障害福祉サービス等を利用し、かつ、当該障害福祉サービス等において、介護福祉士等により実施されるものである。

  障害福祉サービス
   同行援護、行動援護、生活介護、短期入所(注)、共同生活介護、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助

  障害児支援
   児童発達支援(上記(1)ロの表の医療型を除く。)、放課後等デイサービス、障害児入所施設(上記(1)ロの表の医療型を除く。)

 (注)市町村により遷延性意識障害者加算等として決定された部分を除く。

 ロ 医療費控除の対象となる金額は、障害福祉サービス等に要する費用に係る自己負担額の10分の1とする。

3 照会者の求める見解となることの理由

(1) 障害者自立支援法等の下における喀痰吸引等は、障害者自立支援法等の規定に基づき、上記2(2)イの表のからによる障害福祉サービス等の下で、介護福祉士等により障害児者の心身の状況に応じた介護の一環として実施されるものであるが、提供される障害福祉サービス等の中で喀痰吸引等に係る部分はその一部分であり、喀痰吸引等に係る対価の額は、これらのサービス事業者が行う費用の総額に含まれている。
 本来であれば、喀痰吸引等に係る対価の額は、各サービスにおける個々の実施状況から算出することが望ましいが、各サービスにおいて実際に行った喀痰吸引等の部分を特定してその対価の額を算出することは、障害者自立支援法等上不可能である。
 そのため、障害福祉サービス等の対価として支払う金額のうち、喀痰吸引等に係る対価として医療費控除の対象となる金額を、合理的な方法で明示していくことが必要となる。

(2) そこで、全国身体障害者施設協議会の調査研究事業における実態調査から、障害者入所施設における喀痰吸引等の所要時間を算定したところ、喀痰吸引等の所要時間は、利用者1人に対し1日の支援に要する総所要時間の約10%という結果が得られた。

 (注)
  1 「身体障害者療養施設『タイムスタディ調査』最終報告書(平成17年3月)」のデータを用い算定したところ、障害者入所施設における利用者1人1日当たりの喀痰吸引に係る平均的な所要時間は23.5分、経管栄養に係る平均的な所要時間は13.8分であった。利用者1人に対し1日の支援に要する総所要時間は450.2分であることから、喀痰吸引等の所要時間が占める割合は(23.5+13.8)÷450.2=8.3%となっているところ、先の文書回答のとおり、類似の訪問看護における喀痰吸引等の所要時間の割合は約1割と推計されており、本件においても訪問看護の場合と同様に約1割を推計値としている。

  2 当該調査の結果は障害者入所施設のデータに基づくものであるものの、障害者入所施設以外の障害福祉サービス等における喀痰吸引等の実施データはなく、また、喀痰吸引等が行われる障害児者であれば必要なサービス時間は同じであり、障害児者が在宅の場合と施設にいる場合とで、提供されるサービスの時間が大きく異なることはない。

(3) 上記(2)の調査結果のとおり、障害者入所施設においては喀痰吸引等に係る所要時間の割合が10分の1であることから、障害福祉サービス等における喀痰吸引等に係る費用の割合もこの割合により算定することは合理的であるととともに、障害福祉サービス事業者及び障害福祉サービス等の利用者の利便及び画一的な実施という観点から、上記2(2)のイに掲げる全てのサービスにおいて同様の取扱いとすることが適当と考える。
 したがって、このような喀痰吸引等の実態を踏まえ、喀痰吸引等の対価に係る医療費控除の対象となる金額は、障害福祉サービス等に要する費用に係る自己負担額(次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める額)の10分の1をその対価の額として取り扱うことが相当と考える。

 イ 指定障害福祉サービスの場合
  支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して障害者自立支援法施行令で定める額(当該政令で定める額が障害福祉サービス費用基準額の100分の10に相当する額を超える場合は100分の10相当額)

 ロ 基準該当障害福祉サービスの場合
  指定障害福祉サービスの場合に準じて算定した自己負担額

 ハ 指定通所支援又は指定入所支援の場合
  通所給付決定保護者又は入所給付決定保護者の家計の負担能力その他の事情をしん酌して児童福祉法施行令で定める額(当該政令で定める額が障害児通所給付費基準額又は障害児入所給付費基準額の100分の10に相当する額を超える場合は100分の10相当額)

ニ 基準該当通所支援の場合
 指定通所支援の場合に準じて算定した自己負担額

(注) 上記イからニにおける用語の意義は、別添のとおりである。

(4) なお、上記2(2)のイに掲げる障害福祉サービス等において喀痰吸引等が行われた場合の証明書については、これまでの「在宅介護費用証明書」及び「障害福祉サービス利用者負担額証明書」を別紙様式「障害福祉サービス等利用料領収証」(PDF/114KB)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/shotoku/130130/pdf/01.pdf
とすることとし、当該領収証に喀痰吸引等の対価の額(自己負担額の10分の1相当額)を「費用額」欄に記載することにより、医療費控除の適用に関し疑義が生じないよう措置することとする。

〔別添〕

1 指定障害福祉サービスとは、都道府県知事、指定都市の市長及び中核市の市長が指定する者(指定障害福祉サービス事業者)により行われる障害福祉サービスをいい(障害者自立支援法29)、基準該当障害福祉サービスとは、指定障害福祉サービス以外の障害福祉サービスをいう(障害者自立支援法30)。

2 指定通所支援、指定入所支援とは、都道府県知事が指定する者(指定障害児通所支援事業者)又は障害児入所施設(指定障害児入所施設)により行われる障害児通所支援又は障害児入所支援をいい(児童福祉法21の5の3、24の2)、基準該当通所支援とは、都道府県の条例で定める一定の基準を満たすと認められる事業を行う事業所により行われる支援をいう(児童福祉法21の5の4)。

3 障害福祉サービス費用基準額、障害児通所給付費基準額、障害児入所給付費基準額とは、指定障害福祉サービス又は指定通所支援若しくは指定入所支援に通常要する費用につき、厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額を合計した額をいう(障害者自立支援法29、児童福祉法21の5の3、24の2)。



〔回答〕 回答年月日:平成25年1月30日 回答者:国税庁課税部審理室長
回答内容 標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。
 ただし、次のことを申し添えます。

(1) この文書回答は、ご照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答ですので、個々の納税者が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。
(2) この回答内容は国税庁としての見解であり、個々の納税者の申告内容等を拘束するものではありません。

吸引等の医療費控除・障害サービス1

以前、介護サービスと確定申告について触れましたが、
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31810354.html

今度は障害者(児)サービスの方です。
(レイアウトは少々いじっています。詳細は、国税庁サイトの原文もご確認ください。)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/shotoku/130130/index.htm
 


障害者自立支援法等の下での介護福祉士等による喀痰吸引等の対価に係る医療費控除の取扱いについて(照会)

障障発0123第1号
平成25年1月23日
国税庁課税部審理室長 住倉 毅宏 殿
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
障害福祉課長 辺見 聡

障害者自立支援法等の下での介護福祉士等による喀痰吸引等の対価に係る医療費控除の取扱いについて(照会)

1 照会の趣旨

 障害者自立支援法の下における障害福祉サービス及び児童福祉法の下における障害児支援(障害児通所支援及び障害児入所支援をいう。以下同じ。)の対価に係る現行の医療費控除の取扱いについては、所得税法第73条及び同法施行令第207条の規定に基づき、次に掲げる通知等により当省から関係団体、関係機関等に周知を行い、その運用がなされているところである。

平成2年7月27日付老福第145号通知「医療費控除の対象となる在宅療養の介護費用の証明について」(通知)
平成18年12月25日付事務連絡「『医療費控除の対象となる在宅療養の介護費用の証明について』の一部改正について」
平成22年2月8日付事務連絡「障害者自立支援法の下での在宅介護サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて」

 今般、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成23年法律第72号)による改正後の社会福祉士及び介護福祉士法の規定により、介護福祉士及び認定特定行為業務従事者(以下「介護福祉士等」という。)が、診療の補助として喀痰吸引及び経管栄養(同法附則第3条第1項に規定する特定行為を含む。以下「喀痰吸引等」という。)を実施することが認められたところである。
 また、平成24年度税制改正において所得税法施行令第207条が改正され、介護福祉士等による喀痰吸引等の対価で平成24年4月1日以後に支払うものについて、医療費控除の対象とされたところである。
 そこで、障害者自立支援法及び児童福祉法(以下「障害者自立支援法等」という。)の下で実施される介護福祉士等による喀痰吸引等については、障害福祉サービス又は障害児支援(以下「障害福祉サービス等」という。)に要する費用に係る自己負担額の10分の1をその対価として医療費控除の対象と取り扱うこととしてよいか、貴庁の見解を承りたく照会する。
 なお、介護保険制度の下で実施される介護福祉士等による喀痰吸引等については、居宅サービス等に要する費用に係る自己負担額の10分の1を医療費控除の対象として取り扱う旨、当省老健局からの照会に対する貴庁平成24年12月21日付文書回答により明らかにされているところである。

2 照会に係る事実関係等

(1) 障害福祉サービス等の対価に係る医療費控除の取扱いについて
 現行の障害者自立支援法等の下での障害福祉サービス等の対価に係る医療費控除については、次のとおり取り扱われている。

 イ 障害者自立支援法に基づき利用する障害福祉サービスのうち、次に掲げるものが医療費控除の対象とされている。
  サービス種別/医療費控除の対象部分
  療養介護/自己負担額の全額
  居宅介護(注1) /・身体介護(居宅における身体介護が中心である場合)
            /・通院等介助(身体介護を伴う通院介助が中心である場合)
            /・乗降介助(通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合)
  重度訪問介護/自己負担額の2分の1(注1、2)
  重度障害者等包括支援(注3)/提供されたサービスに係る自己負担額のうち、居宅介護及び短期入所の部分は全額、重度訪問介護の部分は2分の1が対象(注1、2)
  短期入所/市町村により遷延性意識障害者加算等として決定された部分に限る。

 (注)
  1 医師との適切な連携をとって提供されたサービスに限る。
  2 重度訪問介護及び重度障害者等包括支援については、身体介護に係る部分に限る。
  3 重度障害者等包括支援は、身体介護を中心に居宅介護その他在宅系の障害福祉サービスを提供するもの。

 ロ 児童福祉法に基づき利用する障害児支援のうち、次に掲げるものが医療費控除の対象とされている。
   障害児通所支援/医療型児童発達支援
               ・肢体不自由児通園施設
   障害児入所支援/医療型障害児入所施設
               ・肢体不自由児施設
               ・知的障害児施設(第一種自閉症児施設)
               ・重症心身障害児施設

 ハ 上記イに掲げる障害福祉サービス(療養介護を除く。)を利用した場合、障害福祉サービス事業者から所定の「在宅介護費用証明書」又は「障害福祉サービス利用者負担額証明書」が発行され、当該証明書に医療費控除の対象となる金額が記載される。なお、上記イに掲げる障害福祉サービスのうちの療養介護及び上記ロに掲げる障害児支援については、医療機関において行われるものであるため、領収書や証明書について特に定めてはいない。

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