財政制度分科会(平成27年10月9日開催)資料
福祉用具や住宅改修についても給付抑制の考え方が示されています。
(特に問題の大きい部分を抜粋)
また、軽度者に対する福祉用具貸与は日常生活で通常負担する費用の延長と考えられること、住宅改修(要介護2以下の軽度者の利用が8割弱)は個人の資産形成でもあることを踏まえると、介護保険給付を中重度者に重点化する観点、貸与事業者間の適正な価格・サービス競争を促す観点から、軽度者を中心に、利用者負担の在り方についても見直しが必要ではないか。
[3] 負担のあり方の見直し:介護保険給付を中重度者に重点化する観点、民間サービス事業者の価格・サービス競争を促す観点から、原則自己負担(一部補助)とし、軽度者の福祉用具貸与に係る保険給付の割合を大幅に引き下げる。
○ [3]については、速やかに関係審議会等において制度の実現・具体化に向けた検討を開始し、平成28年末までのできる限り早い時期に結論を得て、その結果を踏まえ、遅くとも平成29年通常国会に所要の法案を提出する。
「軽度者に対する福祉用具貸与は日常生活で通常負担する費用の延長」
って、何を馬鹿なことを言ってますか?
施設や短期入所や通所サービスで、そこに備えつけてある車椅子や杖などの費用を、「日常生活で通常負担する費用」として利用者から徴収していますか?
そもそも、住宅改修や福祉用具などは、重度者より軽度者の方が効果が高いことが多く、かつ重度化を予防、あるいは軽減するものです。
自分の記事からの引用で恐縮ですが、
手すりの設置や段差解消など、住宅改修には、比較的軽度者に効果が高いものがあります。
最大でも20万円(うち公費は18万円)という投資によって、家族やヘルパーなどの手助けがなくても日常生活を送ることができる可能性が広がる、費用対効果が高い給付です。
たとえば、経済的理由で福祉用具や住宅改修(手すりなど)が利用できないと、要介護度に影響が出てしまう確率が非常に高いんですよね。
認定調査で、「つかまればできる」とかが「できない」などに変わると、1段階や2段階重くなることも珍しくない。
だから、経済的理由で自費利用できなかった人が、調査時点で要介護3、認定後に給付を受けて軽度化、
などということも、財政制度分科会資料の案ではあり得るということになります。
だいたい、介護職員不足というご時世で、住宅改修や福祉用具というハードウェアで介護力を補えるのなら、それをいくらかでも利用するのが本筋ではないですか?
ヘルパーや家族が(一部)介護するにしても、ハードウェアの助けを借りた方がずっと労力が少なくて済みます。
それから、「住宅改修が個人の資産形成」という主張について。
そもそも、
「住宅改修費の支給対象となる住宅改修は、被保険者の資産形成につながらないよう、また住宅改修について制約を受ける賃貸住宅等に居住する高齢者との均衡等も考慮して、手すりの取付け、床段差の解消等比較的小規模なものとしたところ」(平成12年老企第42号)
なんですよね。
さらに、賃貸住宅、借家等に住む高齢者の場合、資産形成どころか、むしろ撤去義務等との関係で(家主の同意が得られていても)心理的に負の資産になる場合もあるし、公営住宅なら(介護保険に頼らずに)設置者でバリアフリー化すべき(これも個人差があるから万能ではない)、という議論にもなります。
私は、社会の資産形成には寄与しても、個人の資産形成とまではいえないのではないかと考えています。
もうひとつ。
福祉用具や住宅改修には、強みがあります。
輸出に結びつけられるという、「安倍内閣好み」の強みが。
たとえば、軽度者を含めての住宅改修、福祉用具への給付を維持しながら、(利用者の同意を得て)その要介護度やADLの変動などのデータを回収し、ビッグデータとして機器開発に活用する。
いまや高齢社会の「先進国」となった日本が、自国民から得たデータを基に、真に使いやすく効果が高いハードウェアを開発し、それが全世界を制覇する。
それぐらいのことを考えてはいかがですか?
「経済最優先」なんでしょ?