福山型筋ジスの原因解明

特定の糖欠損で筋ジスに 神戸大チーム新たな原因解明

(神戸新聞NEXT 2月26日(金)7時3分配信)

 神戸大学大学院医学研究科の戸田達史教授(神経内科学)らの研究チームは25日、全身の筋肉が徐々に衰える難病「筋ジストロフィー」の新たな原因を解明した、と発表した。患者の筋肉細胞の表面にある化合物には特定の糖がないことが分かり、その糖を加えると異常が回復。筋ジスに根本的な治療法はなく、進行を抑える治療薬などの開発が期待される。

 同日付の米オンライン科学誌「セル・リポート」に掲載された。

 研究チームは日本人に多い福山型筋ジスを対象に、筋細胞の表面にあるタンパク質(ジストログリカン)に結合している「糖鎖(とうさ)」の構造を調べた。

 糖鎖は糖がつながりあった化合物で、筋ジスとの関連性が指摘されてはいたが、その構造や働きは謎が多かった。

 研究チームは、解析の結果、この糖鎖に、バクテリアや植物にしか確認できなかったリビトールリン酸という糖を発見した。また、遺伝子操作で筋ジス患者の細胞を再現して調べたところ、あるはずのリビトールリン酸がなかった。

 リビトールリン酸の材料になる「CDPリビトール」を合成するISPDという遺伝子や、リビトールリン酸を糖鎖に組み込むFKRP、フクチンといった遺伝子が働かないため、糖鎖に組み込まれないことも分かった。

 さらに、患者の細胞にCDPリビトールを加えると、リビトールリン酸が糖鎖に組み込まれ、正常な形になった。

 戸田教授は「研究を進めることで、症状を抑え筋力を増強する治療法の開発につながる可能性がある」としている。(森本尚樹)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160226-00000000-kobenext-sctch


こちらの日経新聞記事(2011/10/6)では、マウスでの実験に成功し、数年後の臨床試験を目指す、とありましたが、
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0502M_V01C11A0CR8000/?at=DGXZZO0195591008122009000000

着実に進歩しているようです。

医学を含む自然科学分野では、研究の進展がわかりやすいのですが、社会制度などはなかなか・・・・・・

という想いにかられたりします。
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軽度者の生活援助の統計3

前記事同様、介護給付費実態調査報告(平成26年5月審査分~平成27年4月審査分)を見ていきます。

今回は、「平成26年度 介護給付費実態調査の概況」より。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/14/index.html

表4「要介護(支援)状態区分別にみた年間継続受給者数の変化別割合」を加工してみました。
年間継続受給者が対象なので、途中から受給した人や、途中まで受給して入院や死亡などで受給しなくなった人は含まれていません。


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要介護3の約55万人のうち、1割を超える人々(11.3%)が要介護1~2に移行しています。
要介護4~5からの移行者も含めると、「重度者」のうち約89,000人が要介護1~2に移行、別に約7,000人が要支援に移行となっています。

国の提案による「要介護3以上でないと生活援助が利用できない」という制度になると、これらの人々は、途中から生活援助のない世界に放り出されるということになります。
1ランクや2ランクで心身の機能が急激に改善するわけでもないのに。

リハビリを頑張って、生活習慣にも気をつけて、ちょっと軽度になると、
「ご褒美として」生活援助が使えなくなるわけです。

利用者のインセンティブ? なに? それ、おいしいの?

要介護度は介護の(標準的な)必要量を表す目安に過ぎません。

サービスの種類を決めるのは、適切なケアマネジメントであるべきです。

軽度者の生活援助の統計2

前記事同様、介護給付費実態調査報告(平成26年5月審査分~平成27年4月審査分)のデータを基に見ていきます。

前記事で触れたように、訪問介護利用者のうち、要介護1~2の方が占める割合は多いですし、
生活援助の訪問回数も少なくはありません。

ですが、単位数で見ると、それほど多くはありません。

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通院等乗降介助のデータが出ていなかったので、身体介護と生活援助とで見ていきますが、
その両者の合計単位数のうち、要介護1~2の生活援助は約17%に過ぎません。
単位数に単価(10円+α)を乗じて費用を算出するので、訪問介護のうち通院等乗降介助を除いた総費用額の17%と考えてよいと思います。

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介護サービス費と介護予防サービス費の合計額(ただし、償還払いが含まれないので、住宅改修費や福祉用具購入費、高額サービス費などは含まれない)は、年間で93億円余り。
そのうち、訪問介護は8.6%。さらに、それから通院等乗降介助を除いた額の17%程度が、国が除外を検討しようとしている「軽度者」(要介護1~2)の生活援助です。

通院等乗降介助を考慮しないで、
訪問介護799,167百万円×17%=135,858百万円 と計算してみます。
軽度者の生活援助を給付から除外した場合の削減額は、少なくともこの額よりは少なくなります。
読売記事(2016.1.20)では、「抑制額は年約1100億円、約30万人の利用者に影響が出る可能性」とあるので、これを基にしましょうか。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34485203.html

1100億円を要介護3の1人当たり特養年間費用3,160.8千円で割ると、34,801です。
生活援助を利用できなくなった人が重度化して、34,800人程度の人が特養に入ったとすると、この「生活援助の削減効果」はなくなる、ということになります。
影響が出るとされる約30万人のうち、わずか34,800人、11.6%の人が特養入所者となるだけで、国の計算は完全に成り立たなくなるわけです。

その11.6%の人が特養入所を希望するかどうかはわかりません。
ですが、生活援助を利用できなくなった1割強の人が重度化するということは十分考えられますし、
特養に入所しなかった(できなかった)としても、重度化により介護費用が増加することは間違いないでしょう。
単価が(相対的に)安い軽度者のサービスを削ると、単価が高い重度者が増えるのです。

もちろん、費用の問題だけでなく、サービスが利用できなくなった人々の生活の質が落ちる、という問題もあります。

(たぶん、つづく)

軽度者の生活援助の統計1

介護保険部会(今後も)紛糾
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34533377.html

読売記事(2016.1.20)1(~4)
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34485203.html

などで、要介護1~2の「軽度者」のサービス、特に訪問介護の生活援助を給付から除外しようとする動きについて触れました。

この問題について、介護給付費実態調査報告(平成26年5月審査分~平成27年4月審査分)のデータを基に考えてみます。


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訪問介護利用者数については、介護給付費実態調査報告の数値を12か月で割って、月当たりの人数を算出しました。
要介護1は約30万人、要介護2は約28万人で、利用者全体(要介護1~5の身体介護+生活援助)の約6割を占めます。
読売新聞の記事では「約30万人の利用者に影響が出る可能性」とありましたが、生活援助が全て外れれば(軽度者は生活援助の利用率が高いので)もっと影響が出るかもしれません。
(読売記事では、生活援助の中でも掃除や洗濯は「流動的」とされていました。)

要介護1~2の利用回数(時間の長短に関わりなくヘルパーの訪問回数と考えてよいでしょう)では、生活援助のみが全体(要介護1~5の身体介護+生活援助で、通院等乗降介助は含まない)の19%弱。
このほかに、身体介護と併せて行う生活援助が8%余りあります。これは生活援助が除外されたとしても訪問自体はなくならないので、「ヘルパーの稼働が3割近く減る」とはいえません。

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以前の記事でも行いましたが、

1人当たりの月間の利用時間を推計してみると、上図のようになります。
身体介護は重度に向かうほど増加します。
生活援助は要介護3付近をピークとする緩やかなカーブを描きます。
重度者に対して軽度者の生活援助の利用が極端に多いわけではありません。
重度になるほどひとり暮らしが減ることを考慮すると、サービスの必要性に応じた自然なグラフといえます。

(つづく)

ことしも、やっぱり確定申告

国税庁サイトで確定申告書を作成する時期になりました。
http://www.nta.go.jp/

これは平成23年分(24年3月15日申告期限)の画面です。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/30305451.html

いろいろ変更になっている可能性がありますが、イメージ的にはそれほど変わっていないと思います。
ただ、今回から、「給与所得や公的年金所得のみの方」専用の画面ができました。

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(画像右下付近にマウスを近づけたときに表示される+マークをクリックすると、拡大表示されます。)

私は昨年のデータを読み込んで作成しているので、この専用画面は使っていませんが。
もちろん、専用画面でなくても、給与のみ、年金のみの方の申告は可能です。

なお、毎年のように書いているような気がしますが、昨年は(も)、常総市の水害など、大きな災害がありました。
災害で家財などに被害を受けた場合、確定申告の雑損控除などで、いくらかでも所得税の還付を受けられることがあります。

また、被災地への義援金については、寄付金控除の対象になる場合があります。

<参考>
 「税と災害」の目次(ブログ「樹形図工房」掲載分)
http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/tokushuu/zeitosaigai.html

制度の詳細が変わっているかもしれないので、国税庁の説明をよく読んでいただくか、
ややこしそうな場合には、各地の税務署や確定申告相談会場などでご相談いただくことをお勧めします。

なお、所得税などの申告期限は、ことしは3月15日(火)までですが、
 納付がない場合(還付を受けるだけ)には、期限後の申告でも問題ありません。

障害者部会報告書(H28.2.17)その3

前記事からの続きです。

(障害者の高齢化に伴う心身機能低下等へ対応)
○ 高齢化に伴い心身機能が低下した障害者に対応するための技術・知識を高めるため、障害福祉サービス事業所に対する研修に心身機能の低下した障害者支援の手法などを位置付けるべきである。

○ グループホームにおいて、高齢化に伴い重度化した障害者に対応することができる体制を備えた支援や日中活動を提供するサービスを位置付け、適切に評価を行うべきである。なお、その際には、入居者の高齢化や障害特性に配慮しつ、医療との連携についても留意する必要がある。

○ 地域で生活する高齢障害者等に対し、平成27年度に実施している地域生活支援拠点に関するモデル事業の成果も踏まえつつ、地域生活を支援する拠点の整備を推進するべきである。その際、グループホームにおける重度者への対応の強化、地域生活を支援する新たなサービスとの連携、医療との連携、短期入所における緊急時対応等を総合的に進めることにより、グループホーム、障害者支援施設、基幹相談支援センター等を中心とする拠点の機能強化を図る必要がある。

○ 「親亡き後」への備えも含め、障害者の親族等を対象とし、成年見制度利用の理解促進(例えば、支援者に伝達するために作成する本人の成長・生活に関わる情報等の記録の活用)や、個々の必要性に応じた適切な後見類型の選択につなげることを目的とした研修を実施すべきである。

○ 「親亡き後」に向けて、適切な助言を行い、親が持つ支援機能を補完し、障害福祉サービス事業者、成年後見人、自治体、当事者・家族など様々な関係者で当該障害者を支えるためのチームづくりを主導するため、主任相談支援専門員(仮称)を創設すべきである。


障害福祉サービスに携わる人々に、障害者の高齢化に伴う支援についての研修等が必要、というのは、そのとおりだろうと思います。

介護保険サービス側でも、同様の知識が必要であったり、状況によって(若年障害者の頃から関わっていた)障害福祉サービス関係者に情報や助言を求めるなど、相応の対応をすべきだろうと思います。
(やっているところは、当然のようにやっていますが。)


このシリーズの最後に、個人的な意見を書くとしたら、本来なら、障害福祉サービスと介護保険サービスとは統合、というより、年齢の切れ目なく必要なサービスが受けられるように一体化されることが望ましいと考えています。
その過程の中で必要なら、介護保険の被保険者年齢の拡大や、保険料が負担できるように障害者年金等の拡充などを検討すべきではないかと。

「本来なら」と挿入しているのは、現在の介護保険制度が著しく異常に、不合理になっているからです。

たとえば、「通院等乗降介助の怪」
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/25604293.html

そもそも、必要な介護の「量」を(近似値的に)表しているのに過ぎない指標(要介護度)をもって、利用できるサービスの「質」(種類等)をここまで制限しているのが間違いでしょう。

特養には入れるか入れないか、というようなことはともかくとして(これも議論があるかもしれませんが)、

在宅サービスの中でどのサービスが最適か、ということは、

適切なケアマネジメントにより決定すべきことです。


介護保険制度を本来あるべき姿にしてからなら、障害福祉サービスとの統合、一体化の議論を進めるについて、私は賛成します。

障害者部会報告書(H28.2.17)その2

前記事からの続きです。

(2) 今後の取組

(基本的な考え方)
○ 日本の社会保障は、自助を基本としつつ、共助が自助を支え、自助・共助で対応できない場合に社会福祉等の公助が補完する仕組みを基本とすることを踏まえると、現行の介護保険優先原則を維持することは一定の合理性があると考えられる。そのもとで、介護保険サービスの利用に当たっての課題への対応について以下のような取組を進めるべきである。

「自助を基本としつつ、」
というあり方についてはともかく、
「共助が自助を支え、」
や、
「自助・共助で対応できない場合に社会福祉等の公助が補完する」
ということが機能していくのか疑問が出てきています。

「共助や公助に充てる金がないから自助を増やすべき」
という(財政当局にとって)安易な方向に行かないか。

国もそうですが、自治体にしても、本来必要な共助、公助を「お荷物」扱いとしていないか、有権者の目が重要になっていると私は思います。

○ その際、障害福祉制度と介護保険制度との関係や長期的な財源確保の方策を含めた今後の在り方を見据えた議論を行うべきである。この点については、障害福祉制度と介護保険制度は制度の趣旨・目的等が異なるとの意見や両制度の関係は共生社会実現の観点から検討すべきとの意見もあることに留意する必要がある。

(障害福祉制度と介護保険の連携)
○ 障害福祉サービスを利用してきた者が、相当する介護保険サービスを利用する場合も、それまで当該障害者を支援し続けてきた福祉サービス事業所が引き続き支援を行うことができるよう、利用者や事業にとって活用しやすい実効性のある制度となるよう留意しつつ、その事業所が介護保険事業所になりやすくする等の見直しを行うべきである。

○ 障害福祉制度と介護保険制度の両制度の連携を推進するため、協議会(障害者総合支援法)と地域ケア会議及び基幹相談支援センターと地域包括支援センターとの連携の推進に向け、地域の実情に応じた窓口の一元化等や弾力的な運用等による連携の好事例の収集と普及等を通じて、全国的に連携の推進を図るとともに、障害福祉計画と介護保険事業(支援)計画が一層調和のとれたものとなる方策を検討の上、講じるべきである。その際、連携が実効性のあるものとなるよう、基幹相談支援センター等による取組を推進する必要がある。

○ 相談支援専門員と介護支援専門員の連携を推進するため、両者の連携が相談支援事業及び居宅介護支援事業が行うべき業務に含まれる旨を明確にするとともに、それぞれの視点の理解を促進するための研修等の方策を講じるべきである。また、介護保険サービスの利用に当たって、円滑なサービスの利用ができるよう、相談支援専門員のモニタリングの頻度について、モニタリングの実態を踏まえつつ、見直しを行うべきである。
 加えて、65歳を超えても引き続き同一の者による対応等を推進するため、相談支援専門員と介護支援専門員の両方の資格を有する者の拡大のための方策を講じるべきである。

○ 介護保険サービスの利用に伴う利用者負担については、従来利用してきた障害福祉サービスと同様のサービスを利用するにも関わらず、利用者負担が発生するといった課題があることを踏まえ、一般高齢者の公平性や介護保険制度の利用者負担の在り方にも関わることに留意しつつ、その在り方についてさらに検討すべきである。

○ 介護保険制度移行に関する現行の取扱いを踏まえ、介護保険給付対象者の国庫負担基準については、財源の確保にも留意しつつ、見直しを行うべきである。

○ 障害者支援施設等に入所していた障害者が退所して、介護保険施設等に入所する場合の住所地特例の適用については、見直すべきである。この見直しについては、次期介護保険制度の見直しにおける適用除外施設全体に係る住所地特例の検討も踏まえ、対応すべきである。

○ 介護保険施設等に移行する障害者の特性を理解した支援を実施するため、送り出し側の障害福祉サービス事業所と受け入れ側の介護保険施設等の連携に向けた方策や受け入れに当たっての適切な支援の方策を講じるべきである。

○ 65歳以上になって初めて障害を有する状態になった場合の障害福祉サービス利用については、現行の介護保険優先原則の下で適切に運用される必要がある。なお、この原則の下では、サービス内容や機能から、介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービス固有のもと認められるサービスについては、障害者総合支援法に基づき給付を受けることが可能となっている。

障害者部会報告書(H28.2.17)その1

それでは、第55回社会保障審議会介護保険部会資料(平成28年2月17日)のうち、
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000112926.html

資料3-2「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」
~社会保障審議会 障害者部会 報告書~(平成27年12月14日)より

なお、文字強調は引用者が行ったものです。

8.高齢の障害者に対する支援の在り方について

(1) 現状・課題 現状・課題

(障害福祉制度と介護保険)
○ 障害者総合支援法第7条に基づく介護保険優先原則については、公費負担の制度よりも社会保険制度の給付を優先するという社会保障制度の原則に基づいている。この原則の下では、サービス内容や機能から、介護保険には相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるサービスについては、障害者総合支援法に基づき給付を受けることが可能なっている。

○ 一方、これまで障害福祉制度を利用してきた障害者が介護保険サービスを利用するに当たって以下のような課題が指摘されいる。

 ・介護保険サービスを利用する場合、これまで利用していた障害福祉サービス事業所とは別の事業所を利用することになる場合がある。

 ・障害福祉制度の利用者負担は、これまで軽減措置によって介護保険制度の利用者負担上限と異なっていることから、介護保険サービスを利用する場合、介護保険制度の利用者負担が生じる。

 ・障害福祉サービスについて市町村において適当と認める支給量が、介護保険の区分支給限度基準額の制約等から介護保険サービスのみによって確保することができない場合は、障害福祉制度による上乗せ支給がなされる取扱いとされているが、自治体によっては、障害福祉サービスの上乗せが十分に行われず、介護保険サービスの利用に伴って支給量が減少する要因となっている。


「自治体によっては、障害福祉サービスの上乗せが十分に行われず、介護保険サービスの利用に伴って支給量が減少する要因となっている。」

これは明らかに不適切なのですが、たとえば東京都区部のようなところでも過去に酷い取扱いがありました。

**********
 障害者自立支援法で定められた居宅介護などの自立支援給付について、東京都新宿区が昨年10月以降、65歳以上の障害者から新規申請があっても認めないよう内規で定めていたことが分かった。厚生労働省は実態に応じて同給付と介護給付の両方適用するよう求めており、区は「不適切だった」と認め、2日、措置を撤回した。
(毎日新聞 2010年2月3日 東京朝刊)
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/24152958.html


報告書の続きです。

○ 障害福祉サービスと介護保険サービスを併給する事例や、高齢化に伴い、障害者を支援する親が要介護者となる事例など、障害福祉制度と介護保険制度保険の緊密な連携が必要となっている。その際には、相談支援専門員と介護支援専門員との連携も重要である。

○ 居住地特例(障害福祉制度)により障害者支援施設等に入所した障害者については、障害者支援施設等が住所地特例(介護保険制度)の対象となっていないことから、障害者支援施設等所在地と異なる市町村の介護保険施設等に移行した場合、それに係る費用などは、当該障害者支援施設等のある自治体の負担となっている。

○ 65歳以上になって初めて障害福祉サービスを利用しようとする者について、介護保険制度との関係を踏まえたきに、障害福祉制度の利用を認めることが適当かという指摘がなされている。

(障害者の高齢化に伴う心身機能低下等へ対応)
○ 高齢化による障害者の心身機能低下に伴い、従来の事業所の体制・人員では十分な支援が行えなくなっているとの指摘がなされている。また、障害者自身も日中活動への参加が困難となったり、若年者と同様の日中活動ができなくなっている等の指摘がある。

○ 障害福祉サービス事業所では高齢者に対応するノウハウが、介護保険事業所では障害者に対応するノウハウが、それぞれ乏しく、それぞれの事業所における支援技術の向上が必要である。

○ 65歳未満の障害者で親と同居している知的障害者は90.7%、精神障害者は65.7%となっており、親と生活している割合が高い。親による支援は生活全般にわたる場合もあり、「親亡き後」は生活を総合的に支援する者が失われることとなる。
 一方、夫婦で暮らしている知的障害者は5.1%、精神障害者は25.4%。子と暮らしている知的障害者は4.3%、精神障害者は16.7%となっており、親以外の支援者が少ないため、「親亡き後」に親に代わる支援者が必ずしもいる状況ではない。

○ 「親亡き後」に備えて、当該障害者がどのような課題を抱えているか、それに対して何を準備しなければらないかを明確にするため、一部の地域では、支援者に伝達するために作成する本人の成長・生活に関わる情報等の記録が、親族等を対象とした研修の中で活用されている。なお、遺産相続に当たって本人が不当な取扱いを受けないよう留意する必要があるとの指摘もある。
 また、「親亡き後」に親以外の者が支援することができる状況を作るためには、親がいる間に準備しておくことが重要との指摘がある。

介護保険部会(今後も)紛糾

軽度者サービス、見直しへ=介護保険から除外も-厚労省


 厚生労働省は17日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護保険部会を開き、介護保険制度で介護の必要性が比較的低い「軽度者」と認定された高齢者が使うサービスについて、見直す考えを示した。増え続ける保険費用の削減が狙い。
 具体的には、高齢者の自宅を訪問して買い物や掃除といった家事を代行する「生活援助」を介護保険の対象から除外し、全額自己負担とすることなどを想定する。年内に結論を得て、2018年度から実施したい考えだ。 
 見直し対象は、5段階ある要介護度のうち、1や2に認定された軽度者向けのサービス。政府の経済財政諮問会議が昨年、「サービスの見直しや負担の在り方を含めて検討すべきだ」と提案していた。
 ただ17日の部会では、「軽度者へのサービスを切り捨てることはできない」「(自己負担になると、利用を我慢する人が増えて)逆に要介護度を高めることになるのではないか」といった反対意見が続出。このため、今後の議論は紛糾も予想される。
 軽度者が使うサービスには生活援助のほか、トイレや食事を介助する「身体介護」がある。厚労省は身体介護について、見直しの対象外とする方針。
(時事ドットコム 2016/02/17-21:13)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201602/2016021700911&g=soc


例によって、文字強調は引用者が行いました。
やはり、反対意見続出です。
「今後の議論は紛糾も予想」とありますが、すでに紛糾しているのではないかとも思います。

議事録が掲載されるのが楽しみですが、紛糾しなかった場合でもそこそこ日数がかかるので、もう少し待つとしましょうか。

この厚労省案については、当ブログでも、

「読売記事(2016.1.20)その1~おまけ」のシリーズや、
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34485203.html

「要介護度は質でなく量を表す」などで、疑問・・・
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34505530.html

・・・というより、はっきり反対を表明しています。


さらに、障害福祉サービスと介護保険サービスとを併用している高齢障害者のサービスはどうするつもりなのだろう(厚労省内で社会・援護局と老健局とでどう調整するつもりなのだろう)というのも気になっていました。

つまり、介護保険(の訪問介護)優先、といいながら、生活援助が利用できなくなるのなら、障害福祉サービス(の居宅介護や重度訪問介護など)で給付せざるを得なくなることになります。
これは相当ややこしい、というか、全国の市町村担当課で混乱が起きることでしょう。


と思っていたら、そのことに対する直接的回答ではありませんが、ちょっと興味深い資料がありました。


第55回社会保障審議会介護保険部会資料(平成28年2月17日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000112926.html

資料3-2「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」
~社会保障審議会 障害者部会 報告書~(平成27年12月14日)

8.高齢の障害者に対する支援の在り方について


これには、(介護保険の軽度者切り捨ての問題がなかったとしても)いろいろ考える材料があるようなので、今後見ていきたいと思っています。

守備位置と守備範囲

たとえばサッカーで、味方の選手(フィールドプレーヤー)が抜かれ、
ゴールキーパーが敵の選手と一対一で対峙しなければならないことがあります。

こういうとき、しばしば、キーパーは、思い切りよくゴール前から飛び出し、相手選手との距離を詰めます。
相手にプレッシャーをかけるという意味もありますが、前で守る方が守備範囲が少なくて済む(言い換えれば効率よく守れる)ということもあります。

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赤のキーパーの位置では、ゴールの一部しかカバーできませんが(赤実線)、
青の位置まで出れば全体がカバーできます(青点線)。

もちろん、ループシュートで頭上を越される、ということもありますし、裏目に出る可能性もないわけではありません。ですが、確率的にいえば、前に出る方が失点されにくいといえましょう。

ところで、介護保険の世界では、国が「介護の重点化」なるものを主張しています。
金がない、介護に携わる人材がない、だから限られた資源を重度者(要介護3~要介護5)に重点的に振り向けるべき、という理屈です。

軽度者のサービスを外すと、重度化する人が増えて、かえって費用がかかるのではないか、という危惧については、過去に何度か記事にしてきました。
(たとえば、この記事の前後など)

どうも、厚生労働省や財務省は、サッカーでいえば、へぼキーパーではないかという気がします。

そもそも、介護保険や老人福祉行政において、守るべきゴールは要介護3~要介護5の人だけではないのですが。
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