軽度者支援についての議論

2016年2月17日 第55回社会保障審議会介護保険部会 議事録より
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000117644.html

○鈴木(邦)委員
(略)軽度者への支援のあり方については、軽度者とは、要介護1、2のようですが、こういった方々を単純に切り捨てることはできないと思います。認知症初期集中支援チームにより、認知症を早期発見しても、その後の対応が伴わないことになりますと、何のためにするのかということになります。ドイツでは、むしろ、日本の要介護3、4、5に相当する3段階だったのを、認知症の軽症、中等症を拾うために5段階に見直すということもありますので、日本の優れた介護保険制度をぜひ維持していただきたいと思います。
 また、福祉用具・住宅改修については、高額な介護ロボットなどが、これから出てくると思いますので、まず、有効性、安全性の評価や、価格を抑制する仕組みなどの導入が必要だと思います。不適切な使用の是正は不可欠ですが、軽度者といえども、必要な場合には使えるような形にしないと、介護保険の理念である自立支援が損なわれるだけでなく、家族介護が必要となって、それこそ介護離職ゼロが達成できなくなると思います。
 最後にその他のところでございますけれども、今後、高齢化に伴って、医療は、高度急性期医療のニーズが低下しますので、一定の効率化は可能だとしても、介護ニーズは増加し続けるので、抑制はより困難であると考えられます。
 そもそも、既に世界一の高齢化率である、我が国の介護費用が世界的に見て高額なのかどうか、医療のほうは出るのですが、介護のほうはなかなか出ないので、それがどうなのかをお聞きしたいと思います。
 私が数年前にオランダで、OECDのロングタームケアを見たところ、2008年にOECDの平均よりわずかに高い10位、高齢化のピークに近い2050年でも5位で、日本の断トツの高齢化率を考えれば、既にかなり抑制されているのではないかとも考えられます。
 今後とも、自立支援や、介護の社会化といった、世界的にも極めて優れた我が国の介護保険の理念の旗を降ろすべきではないと思います。
 介護報酬改定も、マイナス改定が2回続きますと、現場が疲弊することは診療報酬で証明されておりますので、次回は、そうしたことのないようにしていく必要があります。このままだと、介護保険は中重度や認知症に特化した保険にならざるを得ないという懸念がありますけれども、ぜひ、国民の老後の安心を確保するために、介護保険が、これまでどおり必要な保険として継続されるように、財源の確保や被保険者範囲の見直しも検討していく必要があるのではないかと思います。

○阿部委員
(略)給付のあり方の中の軽度者への支援のあり方、特に生活援助サービスをどのように考えていくか重要な点です。これは、場合によっては地域支援事業のほうで受け取っていただくこともあり得るかなと思っております。
 それから、福祉用具とか住宅改修というのは、軽度者に対する給付のあり方を見直すことで、もう少し民間の力が活用できる分野になるかもしれないと思っております。
 負担につきましては、やはり、利用者負担について、もう少し検討しなければならないと思っております。2割負担の対象の拡大というのを真剣に議論をいただきたいと思っております。
 それから、いわゆる費用負担の中の総報酬割でございますが、これにはあらかじめ反対と申し上げておきます。もともと、全ての2号被保険者で等しく支え合うという仕組みであったはずですので、総報酬割については強く反対いたします。
(略)

○大西委員
(略)右上の給付のあり方の軽度者への支援のあり方でございますけれども、新聞報道が出てから、市町村側からいろいろ反発が出たりしております。やはり、軽度者であっても、給付をちゃんとやることによって重度化を防ぐことにもつながっています。それをまた地域支援事業にといいますと、結局、市町村の持ち出しの負担みたいな形が出てきかねませんし、軽度者のサービス低下にもつながりかねません。
 そういうことで、これをやることによって、逆に本末転倒、要介護の状況が悪くなったり、要介護者が増えたりすることのないように、その辺につきましては、慎重に扱っていただきたいなと思っております。
 もう一つ、これは、若干中長期的な話になるのですけれども、市長会の中で、介護保険と、これから、障害者施策、これについて、統合するような方向で、きちんと議論すべきではないかと、お互いの施策の持続可能性というようにものを考えた場合に、障害者も高齢化が進む中で、今の障害者施策と介護保険制度は、若干そごがございます。先ほど3年後の見直しの中でも出てきましたが、それは、局所的な調整の部分でございまして、もう少し制度全体として持続可能な統合みたいなものを考えるべきではないかというような議論が出ています。
 そう簡単にいかないのはよくわかっておりますが、ぜひとも国のほうでも、中長期的な制度統合に向けた議論というのを始めていただけないだろうかと。市長会としても、今後、しっかりと議論していきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。

○花俣委員
(略)先の介護報酬改定あるいは介護保険の制度改正では、要支援者の予防給付を新総合事業へ移行していく。あるいは、また、利用者の負担割合、補足給付の見直し等について、もう既に、昨年4月、8月以降、施行されているところでございます。
 家族の会では、これらの改定については、皆さんも御承知いただいておりますとおり、署名活動をするなどし、これまで、終始反対の立場を明らかにしてまいりました。
 そこで、既にスタートしている、これらの改正点について、給付費分科会でも検証報告とあわせて、今後、私たち当事者が危惧しておりました点に関しても、例えば、新総合事業の進捗状況あるいは実態調査、検証など、こういったことをぜひとも課題の整理、検討を丁寧に行っていただきたいと願っております。
 それから、経済財政諮問会議で出されております、数字を主としたデータ分析、見える化、それだけでは介護の実態あるいは現状というのは、決して十分に見えてこないのではないかと考えます。
 持続可能な介護保険制度とするための、給付の削減等だけでは、なかなか解消できないのではないか。あるいは、一方で、給付の削減をすることで、結果的に、重度化のスピードを早目あるいは介護保険財源をますます圧迫しかねることになるのではないかと考えております。
 先ほどから、お話が出ておりますように、これは、御質問なのですけれども、40ページの骨太の方針やアクション・プログラムあるいは51ページの経済・財政再生計画改革工程表等々にも記載されておりますように、負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化として、軽度者に対する生活援助サービスとあるのは、この軽度者というのが、一体どの認定ランクを指すのか、あるいは生活援助サービスというのは、ホームヘルプサービスのことなのかということを確認させていただきたいと思います。
 それで、今後、自分ごととしての認知症施策というのは、2025年問題に向けての取り組みにとどまることなく、さらには、その先までを見据え、私たちの子供が、あるいは孫世代が本当に安心しておいていける社会をつくるためにも、委員の皆様の御議論に期待しつつ、私たち当事者の立場からも、この大きな課題に真摯に向き合っていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

○辺見振興課長
(略)軽度者についてでございますけれども、これまで、中重度者といったような議論に際して、要介護3以上で、線を引いて加算を設けるといったような実例はございますので、中重度者以外のところは、軽度者という考え方もあるかとは思いますけれども、しかしながら、要介護度1、2、3、4、5、要支援1、2に対して、どこのところが重度で、どこのところが軽度かという明らかなスケールがあるわけではございませんので、ここで言っている軽度者というのは、必ずしもどこかのところを特定していくというほど厳密ということではないと考えております。
 そこのところは、むしろ、さまざまな視点から御検討をいただくべきところかなと思っております。
 また、生活援助サービスでございますけれども、訪問介護のサービスの中で、身体介護と家事援助と分かれる中で、家事援助のサービスを生活援助等と呼ばれておりますので、そこのところが想定されているものかとは思いますけれども、この文章自体は、その他給付についてということでまとめられておりますので、対象となるのは、訪問介護のところだけではなくて、いわゆる検討の対象という意味で、その他給付ということでカバーをされていて、実際に、どういう方向で検討していくのかというのは、まさに今後の議論ということかと考えております。

○井上委員
(略)私は、高齢社会をよくする女性の会という市民活動団体から来ております。もう大部分の皆様がおっしゃいましたように、軽度者への支援のあり方というところで、やはり、新聞やネットなどを見て、皆さん、すごく不安がっています。
 こういうときに、やはり、先ほどおっしゃいましたように、利用者サイドからの視点も入れた議論を今後していただきたいというのと同時に、要支援1、2が、地域支援事業に移りましたが、まだ、その検証も出されないうちに議論をするのは、ちょっと早いのではないかと思います。地域支援事業が動き出して、その成果を見ながら議論していただければ、もっと具体的にわかりやすくなるのではないかと思っております。
 要介護1、2といっても、それぞれの方たちが、かなり違った状態でいらっしゃるので、そうした点も踏まえ当事者視点に立った議論をつよく望むところです。

○土居委員
(略)軽度者への支援のあり方ですけれども、確かに、前回の第6期での議論でもあったわけですが、重度化を予防するためには、軽度者への支援をしっかりやるべきだということは、一理あるとは思いますが、本当に何が重度化予防になるのかというエビデンスが、やはり不十分だと思います。
 はっきりと重度化予防に効いているというようなエビデンスを、特に、このレセプトデータに基づきながら示していただいて、それで、今後のあり方を検討するということは必要だと思います。
(略)

○小林委員
(略)前回の改正で行われた利用者負担や軽度者への支援のあり方などの見直しについて、その影響を十分踏まえた上で、より一層の見直しを進めることが必要であると考えておりますので、次回の改正において、地域包括ケアシステムを支える制度の充実のための見直しと、制度の効率化、公平性の向上のための見直しが、メリハリをつけて行われることを強く望みます。

○齊藤(秀)委員
(略)地域ケアを進めることは大事だと理解をいたしておりますけれども、その1つであります、新しい地域支援事業についての都道府県、市町村ごとの進捗状況を拝見いたしますと、この成熟には相当時間を要するなという印象を実は持っております。
 受け皿が未成熟なところに、地域の特性に応じた対応というものを矢継ぎ早に求めても実効性は期待できないのではないかと考えております。
 そういった中で、軽度者の方々にも、地域支援事業に移行してはどうかという意見があるわけでありますが、私は、とてもこれは現実的なものとは言えないのではないかと思っております。
 既に何人かの委員が申されますように、むしろ、これは重度化を進めることになっても、制度として健全なものになるとは考えにくいと思っております。
 もう一点、個別の議論を今後していくわけでありますけれども、その検討事項が、自立支援でありますとか、介護社会化といった制度の基本的な理念に照らしながら、結果的に制度は維持されたけれども、理念は失われたといったことにならないように、この部会での慎重な検討が必要だと申し上げておきたいと思います。

○佐野委員
(略)給付費を適正化するために、要介護の発生予防ですとか、重度化予防などにも積極的に取り組むべきだと思います。また、医療の分野におきますと、医療保険者は、当然ながら加入者の疾病予防ですとか、健康増進に取り組んでおるのですけれども、介護分野における市町村、さらには、後期高齢者医療広域連合においても、さらに保険者機能を高めていくということが必要なのではないかと思います。
(略)

○伊藤委員
(略)今回、骨太方針から多くの宿題が示されているわけですけれども、こういった議論をする際には、先ほどから出ている要支援者に対する事業について、きちんとやはり検証していく必要があると思っています。
 今回の資料1の23ページのところに、「新しい総合事業・包括的支援事業の実施予定時期」として保険者数が出ていますが、こういうのは、利用者の認識まで含めた実情の把握をした上で、ここで、それを踏まえた議論をしていきたいと思っております。
 よくあるのが、先進事例を示して、これを使っていきましょうというようなやり方がありますけれども、これだけ自治体の実情が違う中で、先進事例がどれだけ有効なのかということも聞いておりますので、こういった丁寧な議論をしていきたいと思っております。
 負担のあり方についても、今回もテーマに上がっておりますけれども、とかくこういう縦割りの部会、審議の場というのは、介護保険制度のみで議論をしてしまいがちですけれども、他方、年金の改定方法を議論する方針も立てられてしまっている。
 そういうようなことを考えると、どれだけ負担ができるのかといったことも制度横断的な検討が必要と思っております。
 また、軽度者の部分ですけれども、先ほども軽度という定義については、一概に要介護度ということで切るものではないという説明があったところで、これも一旦はよかったとは思っておりますが、軽度かどうかといった点については、その家族や住まいの状況とか、認知症の有無とか、利用者の状況なども丁寧に見ていく必要がありますので、そういうスタンスで臨みたいと思っております。
(略)

○桝田委員
(略)持続性の問題から言うと、費用対効果というのを考えなければいけませんので、地域支援事業、介護予防事業、特に今回移行して、まだ、姿が見えていきませんけれども、介護予防の部分の費用対効果というのは、常に、やはり考えながら動いていかないと、かなり難しい問題があると思うのです。介護予防は必要ですけれども、では、かけた費用に対する効果がどれだけあるのと。
 特に、今回の地域支援事業、介護予防という部分は、保険制度だけではなくて、地域が一緒になって動かないと達成できないというフレームになっていますので、やはり地域起こし、村起こし的な部分を含めて、住民みんなで介護予防をしていくのだという気運をつくっていくというのは、制度上の問題だけではなくて、地域的な問題をどうしていくかをクリアにしないと、達成できないという問題がありますので、世代間の公平性というのを主眼にせざるを得ないし、制度の持続性というのも、当然必要ですけれども、制度をここで大きく変えていく部分、変えざるを得ない部分というのは、大きなフレームとして、今、最初に検討してもいいのではないかと。
 介護保険の守備範囲は、ここまでやりましょうという部分が、やはり必要でないかと。そういうふうに思っております。

○武久委員
(略)ドイツを初め、ヨーロッパは、寝たきりはほとんどいないと言われているわけですけれども、では、ドイツの要介護度と日本の要介護度はどのぐらい違うのかと。やはり日本人と西洋人とを比べても、ここはチェックして対比する必要があるだろう。寝たきりがほとんどいないと言いながら、日本ではめちゃくちゃ寝たきりが多いわけですね。私が見てみると、急性期病院での平均在院日数がドイツは五、六日、日本は特定除外という制度がありますので40日ぐらい。6倍から8倍ぐらい長く急性期病院に入院しているということによって、リハビリ効果が非常に低くなっているということはデータがあります。
 保険局が急性期での医療の制限にかかってきましたけれども、ここの長くいるということに対して、その間にリハビリが十分行われないことの損失というものが、後々の寝たきりの拡大になっていくとしたら、これは医療と介護の連携の非常に重要なポイントだと思います。
 ただ、もう一つ、介護保険の前には、自助、共助、公助ということがあったのです。ところが、公助を公がしてくれるのであれば、別に自助も共助も要らないではないか。隣近所が手伝ってくれたのも、もう要らないではないかということで、それとともに生活支援サービスというのがどんどん拡大してきて、むしろ要支援の人に過大なサービスを行うことによって、要介護度がかえって進むというデータを前の宇都宮課長のときに出されておりましたけれども、いろいろな点でPDCAのCのところをこれから十分に出していただいて、すばらしい2018年にしていただけたらと思います。

○小島参考人
(略)軽度者への支援のあり方の中で、先ほど来、御意見が出ているのですが、実際の要介護認定、要支援2と要介護2というのは、介護に要する負担時間数が全く同一でございまして、何が違って重度化しているかというと、やはり医療的ケアが必要かどうかというような内容で要介護認定をされているということがありますので、ぜひとも、軽度者の支援の見直しの際には、要介護認定、かなり市町村によっての認定もばらつきがございますので、この均てん化、標準化ということについても、制度の改善をしていただければありがたいなと思っております。(略)
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介護移住より保育移住

「保育園落ちた日本死ね」
とかいうブログが、世間でも国会でも話題になっていたようですが・・・・・・

地方では、けっこう保育所に入りやすいことがあります。
待機があったとしても、おそらく東京の比ではない。

どうしても東京(あるいは首都圏など)でなければ生活できない、
または
自己実現ができない、

という人たちは別ですが、

そうでない人たちなら、東京(あるいは首都圏)にこだわらず、
地方に移住するという選択もあると思います。

あるいは、
最初から(地方都市などの)故郷にとどまる、という選択も。

介護移住の問題で、

********************
本当は、(希望しない人は)青年期や壮年期に大都市圏なんかに移住せず、ずっと故郷で生活するというような選択ができる。
そういう条件が整えられれば、もっとよいと思います。
********************

と書いたことがあります。

移住にしても、年取ってからよりは、子育て期か、それより早い時期の方が、ずっと容易ではないでしょうか。


念のため。
東京で、保育対策の必要性がない、という意味ではありません。
(なんせ、人口10万人の地域で出生率を1%引き上げるより、1000万都市で0.1%引き上げる方が人口は増えますし。)
ただ、東京(あるいは首都圏)で生活するということは、それほど価値が高いことではない、という考え方もできると思うのです。

相模原市児相のこと

児童相談所が保護見送り 両親から虐待を受けていた男子中学生が自殺 神奈川・相模原

(産経新聞 2016.3.22 12:19更新)

 両親から虐待を受け、相模原市児童相談所に通所していた中学2年の男子生徒(14)が自殺を図り、2月末に死亡していたことが22日、市への取材で分かった。児相は親の承諾なしに強制的に保護する権限があり、男子生徒は児童養護施設への入所を求め、児相も両親に入所を説得したが、両親は拒否したため一時保護する結果にはならなかった。

 市によると、平成25年秋に当時小学校6年生だった男子生徒の顔にあざがあることを通っていた小学校の教諭が気付き、市に通報。児相は同年11月に虐待案件と認定。両親は児相の呼び出しに応じた上で男子生徒と通所し、指導を受けていた。しかし、その後も両親による虐待は続き、男子生徒は児相に何度も「児童養護施設で暮らしたい」などと訴えていたという。

 26年10月上旬に両親が児相による一時保護の方針をかたくなに拒んだため、男子生徒の通所を停止。その後、男子生徒が進学した中学校は児相に「保護を求めている」と通報したが、児相は「親子の関係が改善してきている」と判断し、保護を見送った。男子生徒は同年11月に親類宅で自殺を図ったという。男子生徒は意識不明が続いていたが、今年2月に死亡した。

 児相の鳥谷明所長は「親子の状態は少なくとも良い方向に向かっていたと思われ、職権を使う急迫した状態にはなかったと考えている」と話している。
http://www.sankei.com/affairs/news/160322/afr1603220019-n1.html


私なら、児童本人が保護を求めているのなら、原則保護すべき、ということから考えるだろうと思います。
「公権力の行使は慎重に」というのは本人同意がない場合のことであって、
・過去に虐待歴があり、
・児童本人が保護を求めている、
という状況では、「「親子の関係が改善してきている」という判断が誤っているのではないか見直すべきでしょう。

ただ、個別の児童相談所やその職員個人に対する批判ではなく、今後どうすればよいか、というようなことを考えていくべきだろうとは思います。


児相職員 育成体制に不備…相模原市報告書

(読売新聞 2016年03月16日)

 相模原市児童相談所(児相)の職員が一時保護中の少女たちを全裸にして所持品検査を行った問題で、市は15日、検証報告書と再発防止策を発表した。実務経験の浅い職員が様々な課題を抱える子供の対応に苦慮し、適切な助言を受けられる体制もなかったことが問題の背景にあるとし、基本動作マニュアルを策定するとともに、他自治体との人事交流、外部の専門家による指導などを通じて職員の育成を図っていくという。(矢牧久明)

 報告書は全裸検査が発覚した昨年12月から今月8日にかけ、児相の一時保護所の職員50人(非常勤を含む)に聞き取り調査し、外部有識者の意見を踏まえてまとめた。

 全裸検査は昨年8月、子供たちが職員に要望などを伝える「意見箱」の記入用紙が1枚なくなったことから、女性職員2人が少女9人に対して行った。

 報告書によると、職員2人は当初、服のポケットの中を確認して所持品をチェックしようとした。しかし、以前に保護中の少女が売春に関するメモ書きを下着に隠していたことがあったため、女性上司が「その方法では不十分」と認めなかった。

 これを受け、職員2人は、1人が少女の前に立ってタオルを広げ、周囲から見えにくい状況にしたうえで、少女にすべての衣類を脱いでもらい、もう1人が衣類を細かく調べる方法を提案。上司は「不正抑止になる」と実施を指示した。

 報告書はこの点について「性急な対応」とし、「刃物などとは異なり、切迫した危険性があるものではなく、緊急に所持品検査を行う必要がなかった」と結論付けた。

 相模原市児相は政令市移行に伴い2010年に開設され、一時保護所は14年に開所したばかりだ。報告書は「職員の実務経験が浅く、専門的指導、助言が十分に受けられる体制ではなかった」と指摘。「想定以上の困難に直面し、職員は適切な対応の判断に迷っていた」といい、「児童に向き合うよりも、問題を起こさせてはならないという管理意識が強くなっていったと考えられる」とした。

 市は再発防止策として▽横浜、川崎市など他の自治体との人事交流▽所持品検査の具体的な方法などに関するマニュアル策定▽外部の専門家による定期的な専門的指導――などを挙げ、児相内部で人権侵害や虐待が疑われる事案が発生した場合は公表することにした。

 記者会見した佐藤暁・こども育成部長は「人権研修を継続的に行い、子供の立場に立った施設運営ができるよう職員を育て、信頼を回復していきたい」と述べた。
http://www.yomiuri.co.jp/local/kanagawa/news/20160315-OYTNT50339.html


これは別の事案ですが、この女性上司というのは、何が目的だと認識していたのでしょうか。
児童相談所というのは、犯罪捜査するのではなく、誰が悪いのかを探るところでもなく、「児童の最善の利益を図るためにはどうすればよいか」ということを目指す機関だと私は考えています。

こういう認識を職員間で共有することは、政令指定都市になったばかりの自治体では、無理なのでしょうか?

相模原市については、人口はともかく、(児童相談所の設置等を行うべき)政令指定都市になるような状態であったのか、疑問があります。
県庁所在地でもなく、地域の中心都市としての歴史的蓄積があったわけでもなく。

場合によっては、政令指定都市になってすぐではなく、数年程度以上の行政経験を経てから(都道府県から)児童相談所事務の移管を受ける、というような制度にしてもよいのではないかとも思います。

震災直後の統計3

それでは、東日本大震災直後の実際のサービス利用状況はどうでしょうか。

まず、居宅介護支援費(介護予防支援を含む)を見てみます。

イメージ 1

これも、介護保険事業状況報告の月報(暫定版)より。
居宅介護支援+介護予防支援の受給額を1号被保険者数で割っていますが、受給額には2号被保険者分も含まれています。なお、平成23年1月と24年6月とは実数値を表示していますが、その間は23年1月を100とする比較用数値を表示しています。
また、震災が起きた23年3月の現物給付は5月の月報に反映するのが原則なので、その5月を少しはっきり目の線で囲んでいます。

やはり、大きく落ち込んでいる保険者が多いですね。また、その前の2月分から報告できないでいる地域もあります。
6月分で大きく増えている地域がありますが、おそらくは前月に国保連に請求できなかった分を月遅れで請求した事業所が多かったからではないかと思います。

一般に、津波の被害があった地域では、24年6月になっても以前の水準に回復していないところが多いようですが、そうでない(増加している)ところもあります。
また、原発事故関連地域では、大きく増加しているところもあります。

次に、実際のサービスの代表として、訪問介護(介護予防を含む)を見てみます。

イメージ 2

こちらも、居宅介護支援の表の表示方法と同じです。
震災時に落ち込んでいるのは同じです。居宅介護支援などより大きな減少かもしれません。
その後は回復し、むしろ増加している地域もありますが、落ち込んだままの地域もあります。
原発事故関連地域は、大きく落ち込んでいる保険者の方が多い印象です。

それにしても、震災後の大変な状況の中、ケアマネやヘルパーなどの現場の方々が、必死に駆け回って避難所や仮設住宅などの高齢者を支援した姿が目に見えるようです。

震災直後の統計2

前記事の続きです。

今回は、要介護(支援)認定。1号被保険者千人当たりの認定者数です。
ただし、これまでの記事と同様、認定者数には2号被保険者も含まれています。
参考までに、平成23年1月の値を100とした場合の24年6月の値を「比率」列に記載しました。
これが多いほど、要介護(支援)認定率が増加しているということになります。

イメージ 1

全国平均では4%程度の増加ですが、そのレベルを超えて増えている保険者が多くなっています。
表の上からいえば、陸前高田市、大槌町、山元町、女川町のように、津波被害が大きくて、統計(介護保険事業状況報告月報)の報告に空白期間があるような自治体は、増加率が高くなっています。

増加率がもっと高いのは、表の下側、原発事故からの避難等の影響が大きかった地域です。
(色塗りの意味は前記事と同じで、黄色が原発事故関連、緑色がそれに加えて津波の被害もあった沿岸部です。)
これらの自治体は小規模なところが多く、変動が激しく出やすい面があるかもしれませんが、それにしてもこれだけ顕著な数字が出ると、やはり全町村避難などの影響が大きかったといわざるを得ません。
避難環境だけでなく、精神的な不安、将来への見通しのなさも、高齢者の心身への影響が大きかったのではないでしょうか。

なお、この記事では、要介護(支援)度は勘案していません。
要介護(支援)度も考慮した指標を用いれば、また別の結果が出るかもしれませんが、その方法は現在のところ検討中です。

(つづく)

震災直後の統計1

「統計から被災地の介護保険を見る」のシリーズ(1~10)では、東日本大震災前年(平成22年)から毎年11月の介護保険事業状況報告の月報(暫定版)を見てきました。

今回は、震災の直前から直後について、同じ月報で見ていくことにします。

まず、1号被保険者数の推移です。
津波の影響があったと思われる、岩手・宮城・福島の3県(介護保険)保険者のうち、太平洋沿岸のものを主な対象としました。
(青森や茨城など他の県でも影響がありましたが、今回は前述3県だけにしぼっています。)
また、海に面していなくても、原発事故の避難指示などで大きな影響があったと思われる保険者も追加しました。
下表で、保険者名を黄色で塗っているのが内陸の原発事故関係自治体、緑色で塗っているのが津波と原発事故の両方の影響があった自治体です。

イメージ 1

二重線で仕切った左側は、平成23年1月末の1号被保険者数です(単位:円)。
その右側、23年2月から24年6月までは、23年1月の値を100とした比較用の数値です。
つまり、100より大きければ23年1月より増加し、100より小さければ減少していることになります。

空欄が目につきますね。
陸前高田市では、23年2月から10月までが空欄です。
大槌町、女川町、山元町にも空欄があります。
大災害のため、介護保険事業状況報告どころではなかった期間です。
(震災前の2月から影響が出ているのは、実際に報告を行うのは翌月になってからのため。)

緑色や黄色の原発事故関係地域は、もっと長期に渡って空欄が続いている自治体があります。
震災の翌年、24年6月月報になって、やっと全ての自治体で復活しました。

この表の空欄は、それ自体が震災と原発事故の影響の大きさを物語るものとなっています。
そんな中で、これらの報告を送り続けた自治体職員、ひとたびは断絶してもまた復活させた人たちには敬意を表せずにはいられません。

さて、この表の期間中、全国レベルでは1号被保険者数は徐々に増加しています。
ですが、3県の沿岸部や原発事故関連地域では、減少している保険者が少なくありません。
一時的な避難なら住民票を動かさない場合が多いとすると、「一時的」ではない転出、あるいは死亡などが考えられます。

なお、震災が起きた23年3月を少しはっきり目の線で囲んでいますが、1号被保険者数の減少は、この3月のみに起こっているわけではありません。
そうではなく、ずっと後になってからも減少が続いている自治体があることに留意する必要があります。

(つづく)

笑いと疾病予防の関係

統計と被災地の介護保険については、まだ書きたいことがありますが、
最近のニュースで、ちょっと取り上げたいものがあったので、本日はそちらを。


笑わない高齢者、脳卒中1・6倍…東大など発表

(読売新聞 2016年03月15日 17時41分)
http://www.yomiuri.co.jp/science/20160315-OYT1T50128.html

 日常生活でほとんど笑わない高齢者は、ほぼ毎日笑う高齢者に比べ、脳卒中の経験がある割合が1・6倍、心臓病の割合が1・2倍高いとの調査を東京大などの研究チームが発表した。

 特に笑わない高齢女性の危険が大きかった。

 研究チームは、65歳以上の男女に毎日の笑いの頻度、持病などを調査。回答のあった2万934人を対象に、笑いと脳卒中などの関係を分析した。

 その結果、高血圧などの影響を除いても、ほとんど笑わない女性は毎日笑う女性に比べ、過去に脳卒中になったり闘病中だったりする人の割合が1・95倍、心臓病になっている人が1・41倍高かった。男性では脳卒中が1・47倍、心臓病が1・11倍だった。

 月に1~3回笑う人でも、ほぼ毎日笑う人に比べ、脳卒中が1・27倍、心疾患は1・18倍だった。


笑わないと脳卒中リスク増える? 千葉大など調査

(朝日新聞 2016年3月12日07時30分)

 普段、笑うことがほとんどない人は、ほぼ毎日笑う人に比べて脳卒中のリスクが1・6倍増えるとの調査結果を千葉大や東京大などの研究チームが発表した。

 2013年に全国の65歳以上の高齢者に調査表を送り、回答のあった2万934人を分析した。笑う頻度は「ほぼ毎日」「週に1~5回」「月に1~3回」「ほとんどない」の4段階で自己申告してもらった。

 「ほぼ毎日」を基準とした場合、ほとんど笑わない人は、脳卒中にかかったことがあると答えた割合が1・6倍高く、心疾患も1・2倍だった。研究グループは「笑いが脳卒中や心疾患の発症を抑える可能性を示した」としている。

 解析をした東京大の近藤尚己准教授(社会疫学)は「笑いは助け合いの元となる人のつながりを生み出したり、ストレスの軽減につながったりすることなどが考えられるが、さらなる研究が必要だ」と話す。(石塚広志)
http://www.asahi.com/articles/ASJ3C5KCBJ3CULBJ00H.html


同じ題材でありながら、新聞社によって多少切り口に差があるようなので、両方とも(一般で閲覧可能な部分を)引用します。

笑いと疾病予防などの関係については、ありそうだな、と思います。

ただ、私の感覚としては、

「笑わないと病気になりやすい」

というよりも、

「笑うと病気になりにくい」

という表現の方が好みに合います。

その表現に置き換えると、

・ほぼ毎日笑う人は、ほとんど笑わない人に比べて、脳卒中になるリスクが4割近く減る
 (全体で62.5%、男性で68%、女性で51%)
・同様に、心疾患のリスクは2割近く減る
 (全体で83.3%、男性で85%、女性で71%)

という感じです。
(あくまでイメージです。)

「笑わないと病気になりますよ」
というより、
「笑うと病気になりにくいですよ」
の方が、高齢者に話しやすいし、受け入れられやすいのではないでしょうか。

統計から被災地の介護保険を見る10

イメージがわかりやすいもの、ということで、3種類のグラフを無理矢理まとめてみました。

イメージ 1

<上段> 大災害で要介護(支援)認定率が増え、
<下段> まず施設サービスの利用者が増加し、
<中段> その後、在宅系のサービスの利用も増加した。

それらの変動は、多少なりとも緩和されている場合もありますが、
影響はまだまだ残っている、というところでしょうか。

もちろん、地域ごと、高齢者個人ごとに個別の課題はあるだろうと思います。

統計から被災地の介護保険を見る9

それでは、サービスの系統ごとに、各自治体の給付額を比較してみます。
1号被保険者1人当たりで算出していますが、例によって、給付額自体には2号被保険者分を含みます。

分類方法は前回(統計から被災地の介護保険を見る4)同様、次のとおりです。

訪問系 : 訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ、居宅療養管理指導、
       定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護
通所系 : 通所介護、通所リハビリ、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護
短期入所系 : 短期入所生活介護、短期入所療養介護
施設・居住系 : 特定施設、グループホーム、地域密着型特定施設、地域密着型特養、特養、老健、療養型
その他 : 福祉用具貸与、福祉用具購入、住宅改修、複合型サービス、居宅介護(介護予防)支援
(各介護予防サービスを含む。)

(実は、前回の説明では夜間対応型訪問介護を記載していませんでした。今回、前回分のデータを含めて見直してみましたが、夜間対応型・・・を加えたとしても数値は動きませんでした。ごくわずかなので。)

では、まず全国平均からです。

イメージ 1
訪問、通所系サービスは26年頃まで増加していきますが、27年は減少しています。
短期入所系は25年頃が、施設・居住系は24年頃がピークで、その後は下降に転じています。
施設サービスは、受給者数自体が、やはり途中から減少に転じていますが、在宅関係(居宅+地域密着型)の受給者数は年々増加しているので、費用が減少した原因としてはH27報酬改定の影響でしょうか。

前回同様、県レベルは省略しまして、大槌町を。

イメージ 2
震災後に施設・居住系が大幅に増加しました。前年から倍増です。その後、徐々に減少しましたが、27年でも、震災前よりはかなり高い水準です。
短期入所系は23年に減少し、その後は変動はありますが、震災前よりは低いレベルで推移しています。
訪問、通所も、震災後に激減しましたが、その後は増加傾向が続いています。

次に石巻市。

イメージ 3
震災後、まず施設・居住系、短期入所系が増加、24年頃からは微減または横ばいというところです。
通所系は26年頃まで増加し続け、27年でも震災前よりは高い水準です。
訪問系は震災後に減少、その後、変動はありますが、27年には震災前より低い水準に戻っています。

最後に相馬市。

イメージ 4
震災後、やはり施設・居住系が増加。その後、変動はありますが、震災前よりは高い水準です。
訪問系は(他地域に比べ)もともと多い自治体ですが、震災後に一度減少するものの、24年頃からは震災前よりも高い水準で推移しています。
通所系も増加傾向です。短期入所系も、変動はありますが、27年まで、ほぼ震災前を上回っています。

(つづく)

統計から被災地の介護保険を見る8

前記事のタイトルを間違えていました(汗)
こそっと(?)訂正して、記事を続けます。

では、サービス受給者数(介護予防サービスを含む居宅・地域密着型、施設)の増減です。
1号被保険者100人当たりの受給者数で表していますが、受給者数には2号被保険者も含みます。

イメージ 1
この5年間で、全国平均は+1.4ポイント上昇していますが、
岩手・宮城・福島の3県とも、それを上回る上昇率です(+1.6~2.0)。
大槌町は低いレベルから上昇し、全国平均に近づいています(+1.6)。
石巻市は震災後の落ち込みから急上昇しましたが(5年で+3.3)、
相馬市は25年頃をピークに下降気味です。

サービスの内訳ごとに見ます。まず、施設サービスの受給者数の割合。

イメージ 2
全国平均は、0.2ポイントの下降。岩手・宮城・福島の3県は、震災後に+0.1、後に元に戻りました。
大槌町は震災後に急上昇し、その後下降に転じますが、5年間の動きとしては+0.9。
石巻市は全国平均より低い水準から震災後に増加し、後に下降しましたが、5年で+0.6。
相馬市は+0.4ですが、徐々に上昇してきています。

では、介護予防サービスを含む居宅・地域密着型サービス受給者数の割合です。

イメージ 3
全国平均は年々上昇し、5年間で1.6ポイントの上昇。
岩手・宮城・福島の3県は、それを上回る上昇率です(+1.7~2.0)。
大槌町と石巻市は、震災後に落ち込んでから大きく上昇しました。
相馬市は、25年頃まで上昇しましたが、その後は低下しています。

(つづく)

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