大川小訴訟の地裁判決

学校側に過失、14億円賠償命令=管理下の児童、津波で犠牲―大川小訴訟・仙台地裁

(時事通信 10月26日(水)15時12分配信)

 東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の児童74人のうち、23人の遺族が、市と県に計23億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、仙台地裁であった。

 高宮健二裁判長は学校側の過失を認め、市と県に計約14億2600万円の支払いを命じた。

 裁判では、津波襲来を予想できたかや、学校管理下にあった児童を津波から安全に避難させることができたかが争点となった。

 判決は、市の広報車が「津波が松林を越えた」と避難を呼び掛けていたことを指摘。津波が学校に到達する約7分前の遅くとも午後3時半ごろまでにこの呼び掛けを聞いた段階で「教員らは大規模な津波が大川小に襲来することを予見していた」と判断した。

 さらに、避難先として選んだ堤防付近の交差点は標高7メートル余りしかなく、「予想された津波の高さは6~10メートルで、避難先としては不適当だった」と指摘。津波から逃れるのに十分な高さがある学校の裏山は、校庭から小走りで1分程度で移動でき、裏山に児童を退避させるべきだったとした。

 原告側は地震発生後に大津波警報の防災無線が流され、保護者が津波警報発令を教員に伝えたことから、「津波を予測できた」と主張。同小の裏山に避難すれば助かったのに、児童を校庭で約45分間待機させた上、津波が遡上(そじょう)した近くの北上川の堤防に向けて移動させた安全配慮義務違反があったとした。

 被告側は、学校は海岸まで約4キロあり、津波浸水被害の想定域外だったため津波到達を予測できなかったと主張。裏山は崩落や倒木などの危険があり、同小校庭より約6メートル高い北上川の橋のたもとを避難先に選んだことは合理的だとしていた。

 判決によると、2011年3月11日の地震発生から津波が大川小に到達するまで51分間あった。教職員は児童を校庭に待機させた後、学校から約150メートル離れた北上川堤防付近の交差点に向け避難を開始したが、津波に襲われ、児童と教職員が犠牲になった。助かったのは最終的に学校近くの裏山に逃れた教員1人と児童4人だけだった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161026-00000075-jij-soci


大川小学校の津波訴訟 石巻市などに14億円余の賠償命令

(NHK 10月26日 18時08分)
東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校の児童の遺族が訴えた裁判で、仙台地方裁判所は「市の広報車が避難を呼びかけたのを教員らが聞いた時点で、津波が到達する危険を予測できた」と指摘して、石巻市などに対し原告全員に14億円余りの賠償を支払うよう命じました。

石巻市の大川小学校は、学校の管理下としては震災で最も多い74人の児童が津波の犠牲になり、このうち23人の児童の遺族は石巻市と宮城県に対し1人当たり1億円、合わせて23億円の賠償を求める訴えを起こしました。
裁判では海岸からおよそ4キロ離れた小学校まで津波が来ることを学校側が予測できたかどうかなどが大きな争点となりました。

26日の判決で、仙台地方裁判所の高宮健二裁判長は、石巻市と宮城県に対し原告全員に合わせて14億2600万円余りの賠償を支払うよう命じました。
判決では「津波が襲ってくる7分前の遅くとも午後3時半ごろまでには、石巻市の広報車が津波が松林を越えてきていることを告げながら避難を呼びかけたのを、教員らが聞いていたと認められ、この時点で小学校に津波が到達する危険を予測できた」と指摘しました。そのうえで、「教員らが校庭からの移動先として目指した川沿いの交差点の標高は7メートル余りしかなく、避難場所としては不適当だった。一方で、近くの裏山には小走りで1分程度で移動できたうえ、過去に学習の場などで児童も登っていた場所で、避難するのに具体的支障はなく、避難についての過失があった」と指摘しました。

また、裁判所は「教員らはみずからの判断で自主的に避難することができない児童らを可能なかぎり避難させるべき義務を負い、多少の混乱をいとわずに児童らをせかし、小走りで移動させてでも早期の避難を最優先すべきだった」という判断を示しました。
(以下略)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161026/k10010744931000.html


大川小学校の津波訴訟 争点と判決の詳細

(同じくNHKの解説より抜粋・編集)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161026/k10010745261000.html

学校まで津波が来ることを学校側が予測できたか

遅くとも津波が来るおよそ7分前の午後3時30分ごろまでには、石巻市の広報車が津波が沿岸の松林を越えてきていることを告げながら、高台への避難を呼びかけていた。

教員らはこれを聞いた段階でほどなく津波が小学校に来ることを予見できた。

・地震がそれまでに経験したことのない規模であったこと
・ラジオで伝えられた予想される津波の高さが6メートルから10メートルという大きなものであったこと
・北上川の河口の地区から大川小学校にかけて津波の進行を妨げるような障害物もなく、
・小学校の標高も1メートルから1メートル50センチしかなかったこと
などからすると、教員らはそのまま校庭にとどまっていた場合、児童の生命身体に危険が生じることを認識できた。

児童を校庭におよそ50分間とどめた学校側の対応

午後3時30分よりも前の段階について
地震の揺れが収まったあとも児童の下校を見合わせたのは、安全が十分確保されていないとの判断に基づいた必要な措置と言える。
裏山には土砂災害の危険があったため教員らが早期に避難しなかったのはやむをえない。

午後3時30分以降について
市の広報車が高台へ避難するよう呼びかけているのを聞いた段階では、可能な限り津波を回避できる場所に児童を避難させる注意義務があった。

原告側の主張の中には、防災無線で流れていた情報でも知ることができたはず、というようなこともありましたが、判決では市の広報車での呼びかけを重視しました。

また、市のハザードマップで大川小が津波による浸水予測地域に入っていなかったこと、同校が避難場所に指定されていたこと、などの被告側の主張については重視しなかったようです。

この裁判については、いろいろな考え方があると思います。

責任の有無やその程度、ということだけでなく、何が生死を分けたのか、
たとえば釜石の小中学生が助かった・・・
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/29679984.html

・・・こととの違いは何か、みたいなことも知りたいと私は思います。
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社会福祉充実計画パブコメ2

「社会福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案」に対する意見の募集について
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34932296.html

について、追加提出しました。

 私は社会福祉法人に寄付したことがありますが、それは過疎地等、営利法人が進出しにくい分野で質の高い社会福祉事業や公益事業が安定・継続して行われることを望むからです。無料・低額サービスを行う原資に費やすことは望んでいません。低所得者対策は、本来、国の責務のはずです。
 社会福祉法人等が介護・看護職員、保育士等の人件費に十分につぎ込めず、見かけ上「内部留保」が貯まっているとすれば、介護報酬等、制度に安定性を欠き、将来の経営環境に不安があるという面もあるでしょう。そのため、控除対象財産額は柔軟に認めるべきです。たとえば、省令案第6条の14第1項第3号で「翌会計年度において、第一号に掲げる事業の実施のため最低限必要となる運転資金」とありますが、「最低限」を削除し、合理性のある目的積立金の類であれば認めるべきです。

なお、1回目はこちらです。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34957871.html


締め切りは10月26日です。

鳥取県の声が届きますか

鳥取県中部で地震がありました。

10月21日、12:12頃のM4.2は、今から思えば前震で、
14:07頃のM6.6が本震だったということなのでしょう。

「豪雪地帯」で家屋が比較的堅牢だったためか、今のところは死者についての報道はありませんが、
負傷者や、多くの住宅、倉吉市役所の庁舎など、被害は広範にわたっているようです。

さて、鳥取県。


で触れたように、島根県との合区で、参議院の地方区選出議員がなくなろうとしています。
(2019年改選議員もいるため、完全になくなってはいない。)
もちろん、有権者数が少ない鳥取県側の候補者が島根県側の候補者を負かすことも理念的にはあり得るのですが・・・

鳥取県・島根県選挙区は、単に面積が大きいだけでなく、因幡、伯耆、出雲、石見、隠岐の旧国単位で五カ国、東西に(隠岐を入れれば南北にも)広がる、地域性も一様ではないとんでもない領域です。

こういう災害が起きると、一票の格差について「機械的平等」を求める弁護士グループ等に、
愚かさ、みたいなものを感じます。
(あくまで私の印象です。)

選挙区以外のことにも気を配れる政治家ばかりだったら、こんな心配をしなくてもいいのかもしれませんが・・・

東日本大震災からの復興よりも東京五輪誘致などの方を優先する政治家たちは現実に存在しますから。

以前にも書きましたが、

発言権と決定権とを分けて考えること、

法案に対する賛否は人口比例でもいいから、国政に対する意見の窓口は過疎地でも維持することを考えるべきではないでしょうか。

<参考>
一票の格差:発言権と決定権
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32647004.html

社会福祉充実計画パブコメ

社会福祉法人制度改革関連のパブリックコメント
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34932296.html

のうち、省令案についての意見を提出しました。

「社会福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案」に対する意見の募集について

次のいずれかの方法にて、御提出願います。
(1)電子政府の総合窓口(e-Gov)の意見提出フォームを使用する場合
「パブリックコメント:意見募集中案件詳細」画面の 意見提出フォームへ のボタンをクリックし、
「パブリックコメント:意見提出フォーム」より提出を行ってください。
(2)郵送する場合
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 宛て
(3)FAXの場合
FAX番号:03-3591-9898
厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 宛て

とのことなので、(1)の意見提出フォームを利用しました。
(500文字以内です。)

 社会福祉法人は国の貧困者対策が不十分であることの尻ぬぐいとして無料・低額サービスを行うよりも、本来の社会福祉事業に力を入れ、質を高めるべきです。採算性が低い過疎地等、他種法人が進出しにくい分野の社会福祉法人を潰してはなりません。事業に影響が出ないように社会福祉充実計画の控除対象財産は十分に確保すべきです。特に事業活動継続に必要な運転資金は、介護報酬等が認定遅れ等で2ヶ月後でも未収となる場合があること、措置費・保育所運営費等でも行政からの支給が遅れる場合があること等を考えると、施行規則案第6条の14第1項第3号の運転資金は福祉部会資料にある「年間事業活動支出の1月分」より大幅に拡大すべきです。
 また、地域公益事業より他の公益事業を必要とする地域も多いので、地域事情によっては後者を前者より優先することも認めるべきです。

ちなみに、施行規則案第6条の14というのは、こちらです。

(控除対象財産額等)
第六条の十四 法第五十五条の二第一項第二号に規定する厚生労働省令で定めるところにより算定した額は、社会福祉法人が当該会計年度の末日において有する財産のうち次に掲げる財産の合計額をいう。
 一 社会福祉事業、公益事業及び収益事業の実施に必要な財産
 二 前号に掲げる財産のうち固定資産の再取得等に必要な額に相当する財産
 三 翌会計年度において、第一号に掲げる事業の実施のため最低限必要となる運転資金
2 前項第一号に規定する財産の算定に当たつては、法第五十五条の二第一項に規定する貸借対照表の負債の部に計上した額のうち同号に規定する財産に相当する額を控除しなければならないものとする。

片隅で聴いていた・・・

ボブ・ディランさんにノーベル文学賞 音楽家・作詞家
(朝日新聞デジタル 10月13日(木)20時6分配信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161013-00000068-asahi-soci

というニュースが飛び込んできましたが、

ディランさんと連絡取れず=授賞から丸1日―スウェーデン・アカデミー
(時事通信 10月14日(金)21時10分配信)
ディランさんの友人の米歌手ボブ・ニューワース氏は米紙ワシントン・ポストに対し、「彼はノーベル賞受賞を認めたくないのでは」と語った。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161014-00000154-jij-int

という報道もあります。

それはそれで彼らしいのかもしれませんが、
ボブ・ディランと聞いて最初に思い浮かぶのは、実はこの曲だったりします。


がっくせいで にっぎやかな このみせの
かったすみで きいていた ボブ・ディラン

彼のノーベル文学賞の受賞には賛否両論があるようですが、
多くの人々に影響を与えた、というのはたしかだろうと思います。

公共の福祉と公の秩序

多くのユダヤ人の生命を救うために本国の訓令に反してビザを大量に発給した杉原千畝氏、そして関連して根井三郎氏、小辻節三氏について、記事に書いたことがあります。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32515749.html

ノーベル平和賞というのは、いろいろ政治的なこともあって、受賞の可否について論評することは難しいとは思いますが、今日の日本人の感覚としては、杉原氏が受賞していたとしてもおかしくない、といえるでしょう。
(ただし、死者の受賞はないのが原則なので、これから贈られるということはありません。)


ところで、自民党の改憲案について過去に触れたことがあります。

自民党案
第十三条 全て国民は、<人>として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、<公益及び公の秩序に反しない限り、>立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

現行憲法
第十三条 すべて国民は、{個人}として尊重される。幸福追求に対する国民の権利については、{公共の福祉に反しない限り、}立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

<赤色>は自民党案、{青色}は、現行憲法の表現です。

これ以外にも、現行憲法の「公共の福祉」という言葉が、自民党案では「公の秩序」などの言葉に置き換わっている箇所が複数あります。

「公の秩序」というのは、自民党がQ&A等でいくら言い訳したとしても、政治や司法に携わる人間の考え方で差が出ることがあります。

今日の(少なくとも私の)感覚では、杉原氏の行為は、(少なくとも世界全体の)「公の秩序」に反するとは思えないのですが、当時の外務省からすれば、「公の秩序」に反する、ということになるのでしょう。
(ちなみに、杉原氏は外務省を退官することになります。)

もちろんユダヤ人に限らず日本国民でない人は第13条の保護の対象にはなっていませんが、
杉原氏のような行為が「公の秩序に反する」とされる可能性があるような改憲案は、私は支持しません。

生活援助外しは見送りのようだが

軽度者対象の「生活援助」 厚労省
介護保険外し先送り

佐賀新聞 2016年10月07日 12時12分

 厚生労働省は6日、ヘルパーらが高齢者の自宅に出向く訪問介護のうち、掃除や調理、買い物などの「生活援助サービス」について、要介護度の軽い人向けの給付を介護保険の対象から外す案を、先送りする方向で検討に入った。代わりに、増え続ける給付費の抑制は必要との考えから、事業者へ支払う介護報酬を2018年度の改定時に引き下げる方向だ。

 12日に開く審議会に示し、議論を求める。生活援助は重度の人を含め約80万人が利用。報酬が下がると、利用者にとっては自己負担(1~2割)分の支払いが減るメリットがあるが、質の低下を招く恐れもある。

 厚労省は財務省の求めで「要介護1、2」(計223万人)向けの生活援助を保険から除外し、市区町村の事業に移すことを検討してきた。しかし、より軽度の「要支援1、2」を対象とした訪問介護と通所介護を市区町村に移行中のため「まずは移行を着実に進め、検証した上で検討するべきだ」と判断した。

 介護保険の枠内にとどめ、要介護度に関係なく報酬を下げることで対応したい考えだ。人員基準などの要件を緩和し、低コストでサービス提供できるようにして、事業者に理解を求める。

 ただ、財務省は軽度者の自己負担割合を増やすなど、より強い給付抑制策を求めており、制度見直しの結論を出す年末まで調整が続きそうだ。

 生活援助を巡っては「軽度者の利用が多く、介護保険が家政婦代わりに使われている」との指摘がある一方、市民団体などは「ヘルパーは自立支援の役割も担っており、給付の縮小はかえって重度化を招く」「認知症の人が生活できなくなる」と強く反発している。(以下略)
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/363902


生活援助サービス
軽度介護、移行先送り 国が継続

毎日新聞2016年10月7日 08時00分(最終更新 10月7日 08時00分)

 政府・与党は6日、2018年度の介護報酬改定で、「要介護1、2」に認定された要介護度が軽い人向けの調理や掃除など生活援助サービスについて、市区町村事業への移行を先送りする検討に入った。財務省は介護保険の対象から外し、市区町村の事業とすることを主張していたが、厚生労働省の社会保障審議会や与党内の反発が根強いことに配慮した。膨らみ続ける介護費の圧縮については、事業者の収入となる介護報酬の引き下げを検討する。

 見直しの対象となっていた生活援助サービスは、訪問介護のうち調理や掃除、買い物など。要介護1、2と認定された人のうち約半数が、生活援助サービスを中心に受けている。「家政婦代わりに安易に利用されている」などの批判もあり、財務省が要介護度が軽い人については介護保険から除外し、市区町村によるサービス提供に変更することを求めていた。

 しかし、利用者らが作る市民団体が「介護保険から外せば、軽度者の重症化につながる」などと反対しているほか、与党内からも「社会保障の充実策が進まない中、これ以上の負担増は認められない」と反発の声が上がる。

 また、15年度の介護報酬改定で、要介護度がより軽い「要支援」向けの一部サービスを市区町村に移行したが、今年4月までに実施した市区町村は全体の32.7%にとどまる。このため、まず要支援者向けサービスの移行の着実な実施を優先する方向で調整する。【阿部亮介】
http://mainichi.jp/articles/20161007/k00/00m/010/115000c


軽度者介護保険サービス 「生活援助」維持の方向
(東京新聞 2016年10月7日 朝刊)

 厚生労働省は六日、介護保険制度の見直し案のうち、介護の必要度が低い要介護1、2の人向けの訪問介護である「生活援助」サービスの見直しを見送る方向で検討に入った。介護保険サービスから外し自治体の事業へ移行させることを検討しているが、介護現場の負担を考慮した。 (鈴木穣)

 生活援助は、自宅で生活する高齢者にヘルパーが調理や買い物、掃除などの訪問介護サービスを提供する。現在は、利用料の一割(一定所得のある人は二割)を利用者が負担、残りは介護保険から支出している。軽度の人の利用が多く「ヘルパーを家政婦のように使っている」との指摘もある。

 厚労省は、生活援助について保険給付から外し自治体の事業に移すことを検討してきた。地域の実情に合ったサービスを提供するとの理由だが、支援体制が整わない自治体によってはサービス縮小も懸念されている。政府は高齢化に合わせて介護保険の財政支出の抑制を進める方針。自治体への事業移行は費用抑制の狙いもある。

 介護保険は要支援1、2と要介護1から5までの七段階。現在、要介護1より状態が軽い要支援の訪問・通所介護を介護保険の給付対象から外し、二〇一七年度まで三年をかけ自治体の事業に移行させている。これに続き、要介護1、2の人の生活援助サービスを移行させれば、自治体や介護現場に負担がかかるため、移行の実態を見極める必要があると判断した。

 検討を続ける社会保障審議会介護保険部会でも委員から「時期尚早だ」「家庭に入ってのケアは専門性も必要。(保険外しは)後々重度化や命に関わる」などの声が上がっていた。事業者の報酬引き下げなどで介護費用を抑えることも検討する。

 財務省は、軽度の人の自己負担増も求めており、年内に結論をまとめる。見直し議論では、福祉用具レンタル支援の自己負担引き上げ、一定所得のある人の自己負担二割の拡大、保険料支払い開始年齢の「四十歳」からの引き下げなども検討している。
(以下略)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201610/CK2016100702000137.html

********************


介護報酬減で供給が確保できるか、とか、いろいろツッコミどころはあると思いますが・・・

利用者の所得等による自己負担割合の拡大は、現在でも行われています。(1割→2割)
そのことの是非は別にして、システム技術的にはそれは難しくないのでしょうが、

・特定の要介護度の人の自己負担割合拡大
とか、それに加えて
・特定のサービスについてだけ自己負担割合を拡大
というのは、かなり難易度が高いと思います。

まず、特定のサービスについてだけ負担割合を変えるというのは、現行ソフトでは対応しないでしょう。

さらに、
(原則として年1回で済む所得等の調査と異なり)要介護度が変わるたびに負担割合が変わる、というのは、
利用者やサービス事業者や居宅介護支援事業所のみならず、保険者も大変です。

区分変更認定で、遡って負担割合が変わったら、重要事項説明とか、介護扶助とか、どうするんだろう?

厚労省や財務省は気楽なものかもしれませんが。

紅茶成分でノロ対策商品ができるか

紅茶成分でノロ消毒=作用発見、商品化目指す―静岡県

(時事通信 10月6日(木)19時7分配信)

 静岡県は6日、紅茶に含まれるポリフェノールの一種「テアフラビン類」に、ノロウイルスを消毒する作用があることを世界で初めて発見したと発表した。県内の企業と連携し、植物由来で体に優しい消毒剤の商品化を目指す。

 テアフラビン類は、紅茶の赤色のもとになる色素で、茶葉の発酵過程で生成される。

 県環境衛生科学研究所はマウスとネコ、ブタの細胞に、人のノロウイルスに近いウイルスとテアフラビン類を混ぜた液を与える実験を行い、ウイルスが細胞に入り込むのを防ぐ作用を発見した。実験に使った3種のウイルスの感染力を約1000分の1に低減できたという。 

 ノロウイルスは感染力が強く、次亜塩素酸ナトリウムや加熱が有効な消毒方法とされるが、金属が腐食したり、手指に使用できなかったりするといった問題点があった。県は、より安全な予防法の開発が新たな産業につながるとして研究を進めていた。

 同研究所の小和田和宏医薬食品部長は「静岡県名産の茶葉を使い、人に優しい消毒剤を作りたい」と話した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161006-00000127-jij-sctch


静岡県サイトでこの発表資料を探しましたが(今夜のところは)見つかりませんでした。
せっかくなので、「紅茶」で検索したところ、

紅茶(仕上茶)の出荷量(平成26年)
1位:静岡県(出荷量12,862,254kg)全国の69%
2位:広島県(2,124,940)11%
3位:兵庫県(933,859)5%
https://www.pref.shizuoka.jp/j-no1/m_blacktea.html

緑茶も静岡県が1位ですが、シェアはせいぜい40%台ぐらいなので、
それに比べても紅茶の市場占有率がものすごく高いということになります。
(ただし、絶対額は緑茶の方がずっと上。)

まあ、地元産品の売り込みでも何でもいいから、ノロに有効な商品を早く開発してください。

なお、現在のところ、紅茶でノロ消毒ができるというわけではないので、念のため。

軽度者サービス縮小に多くの自治体が反対

久しぶりに「介護保険情報BANK」をのぞいたら、
http://www.kaigobank.jp/

よい記事が紹介されていました。


介護縮小 静岡県と浜松市も反対意見書

(中日新聞 2016年10月5日)
 政府が、要介護度が低い軽度者向けの福祉用具レンタル料支援などのサービス縮小を検討している問題は四日の衆院予算委員会で取り上げられた。野党側は本紙報道を紹介して、利用が控えられて高齢者の身体状態が悪化し、介護費の増大や家族の負担増につながると指摘。安倍政権が掲げる「介護離職ゼロ」に逆行すると批判した。安倍晋三首相は「介護離職ゼロは当然進める」と反論したが、サービス縮小は「検討中」として否定しなかった。

 要介護度が低い軽度者向けの介護サービスの見直しを政府が検討していることについて、二十二府県・百二十五市区町の議会で反対や懸念を示す意見書が採択されていることが分かった。民進党の初鹿明博氏が四日の衆院予算委員会で、一般社団法人「日本福祉用具供給協会」の集計結果を示した。地方議会が政府方針に反発する背景には、サービス縮小で要介護者の症状が重度化したり、介護現場の人材難が悪化したりするとの不安がある。

 意見書を採択したのは府県議会で埼玉、千葉、神奈川、石川、岐阜、静岡、三重など。市区町議会では水戸市や東京都板橋区、さいたま、横浜、川崎、浜松、金沢、愛知県の豊橋、一宮の各市など。九月二十三日現在の数字で、今後さらに増える見通しだ。

 埼玉県議会は、福祉用具レンタルや住宅改修費の支援が減った場合に「高齢者の自立した生活を阻害し、(介護)給付費が増大する恐れがある」と指摘。岩手県議会は、訪問介護など人的サービスの利用が増える可能性があるとして「介護人材の不足に拍車を掛けることになりかねない」と主張した。

 初鹿氏は予算委で「地方議会の最大会派のほとんどが自民党だ。自民党の地方議員も、改悪が進んだら困ると思っている」と述べ、サービス維持を求めた。

 福祉用具の取扱事業者や利用者らでつくる団体「福祉用具国民会議」が九月二十日、介護サービス見直し撤回を求める要望書と約二十一万七千人分の署名簿を塩崎恭久厚労相宛てに提出。ヘルパーらの団体や認知症者と家族でつくる団体なども反対の声を上げている。
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20161005/CK2016100502000111.html


民進党や自公政権にはそれぞれ好き嫌いがあると思いますが、
今回の注目点は多くの自治体の議会で反対や懸念を示す意見が採択されているという現実です。

福祉用具や住宅改修など、人的サービスの不足を緩和できる可能性がある給付を抑制するとは、本当に愚かな厚労省(や財務省)。

<参考>「福祉用具の抑制は損なのに」
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34812498.html

もっとも、私は福祉用具や住宅改修だけでなく、軽度者向けサービスの削減自体が愚策で社会的負担が増大する、という意見なのですが。

親の同意はなくても一時保護可能

児相の一時保護、親の同意不要に

TBS系(JNN)9月30日(金)15時30分配信
 虐待を受けている子どもを家族から引き離す「一時保護」を児童相談所がより積極的に行えるよう、厚生労働省は保護者の同意を原則としないなどの見直しをした新しい運営指針を全国の自治体に通知しました。

 一時保護をめぐっては、おととし、神奈川県相模原市の児童相談所が、両親から虐待を受けて自ら保護を求めた男子中学生について、親の同意が得られなかったなどの理由から保護を見送り、男子生徒がその後、自殺しました。

 問題を受けて厚生労働省は、児童相談所が「一時保護」を積極的に行えるよう、運営指針を見直して全国の自治体に通知しました。具体的には、一時保護をする際の保護者の同意について、これまでの「原則として必要」から「望ましい」に表現を改めた上で、子どもの安全確保が必要な場面では「一時保護を躊躇なく行うべき」としています。(30日12:59)
最終更新:9月30日(金)19時14分
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160930-00000068-jnn-soci


「相模原市児相のこと」でも触れましたが、この自殺の件については、指針よりも当該児童相談所の対応の問題である要素が強いと思います。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34596472.html

改正前の運営指針であっても、親の同意が得られなくても一時保護は可能とされています。

児童相談所運営指針>第5章一時保護(抜粋)
第1節 一時保護の目的と性格
 法第33条の規定に基づき児童相談所長又は都道府県知事等が必要と認める場合には、子どもを一時保護所に一時保護し、又は警察署、福祉事務所、児童福祉施設、里親その他児童福祉に深い理解と経験を有する適当な者(機関、法人、私人)に一時保護を委託する(以下「委託一時保護」という。)ことができる。一時保護は行政処分であり、保護者等に対する教示については、第4章第1節に示すところによる。
 なお、虐待等を受けた子どもの一時保護については、本指針に定めるほか、平成9年6月20日児発第434号「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」及び「子ども虐待対応の手引き」による。

1.一時保護の必要性
 一時保護を行う必要がある場合はおおむね次のとおりである。
(1)緊急保護
 ア 棄児、迷子、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合
 イ 虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合(虐待を受けた子どもについて法第27条第1項第3号の措置(法第28条の規定によるものを除く)が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつこれを認めた場合には再び虐待が行われ、又は虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認める場合を含む。)
 ウ 子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合
(2)行動観察(略)
(3)短期入所指導(略)

2.一時保護の期間、援助の基本
(1)一時保護は子どもの行動を制限するので、その期間は一時保護の目的を達成するために要する必要最小限の期間とする。
(2)一時保護の期間は2ヶ月を超えてはならない。ただし、児童相談所長又は都道府県知事等は、必要があると認めるときは、引き続き一時保護を行うことができる。

3.一時保護の強行性
(1)一時保護は原則として子どもや保護者の同意を得て行う必要があるが、子どもをそのまま放置することが子どもの福祉を害すると認められる場合には、この限りでない。
(2)現に一時保護を加えている子どもが無断外出した場合において児童福祉上必要と認められる場合には、その子どもの同意を得なくても再び保護することができる。なお、この場合においても、子どもや保護者の同意を得るよう十分な調整を図る。
(3)一時保護は、子どもの親権を行う者又は未成年後見人の同意が得られない場合にも行うことができる。これは、一時保護が終局的な援助を行うまでの短期間のものであること等から例外的に認められているものである。なお、この場合においても親権を行う者又は未成年後見人の同意を得るよう十分な調整を図る必要がある。

第2節 一時保護所入所の手続き
1.一時保護の開始
(1)入所前の手続き
 ア 一時保護の決定は受理会議等において検討し、児童相談所長が行う。緊急の場合においても臨時の受理会議等を開いて検討する。
 イ (略)
 ウ 一時保護の決定に当たっては、原則として子どもや保護者に一時保護の理由、目的、期間、入所中の生活等について説明し同意を得て行う必要があるが、緊急保護の場合等子どもを放置することがその福祉を害すると認められる場合にはこの限りではない。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv11/01-05.html

第2節の手続き関係部分だけを読むのではなく、第1節、特に3の「一時保護の強攻性」(3)あたりも読み込んで制度の理念を真に理解していれば、相模原市のような事態にはならなかったのではないかと思います。
(そして、全国的には少なからぬ児相が保護者の同意なく一時保護に踏みきった経験があるでしょう。)

もっとも、政令市になったばかりで人材も経験も十分ではない自治体でも適切に一時保護が行えるように、という意図での指針改正なら、反対するつもりはありません。

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