AIによる評価

藤井聡太四段は、将棋ソフトの評価値を使って自分の指し手が良かったか悪かったかを学習してきた、
というような記事をどこかで読んだような気がしますが、確認できていません。

まあ、そういう話が出るほどに、将棋におけるコンピュータソフトが進化してきた、とはいえるでしょう。

将棋のルール上、どんな手が指せるか、ということについては、ソフトは瞬時に探し出せます。

ただ、その中の一手を選択して指した局面、それに対して相手が次の一手を指した局面が、どちらがどれくらい有利な状態かを判断するのは容易ではありません。

将棋の形勢を判断する要素としては、

・駒の損得
・駒の効率
・玉の守りの堅さ
・手番がどちらか

などといわれています。

駒の損得は、たとえば、
歩:1点、 香:3点、 桂:4点、 銀:5点、・・・・・などというように数値化して比較する方法があります。

駒の効率は、たとえば重要な場所(自分の玉や相手の玉のそばなど)で働いているか、それとも端っこの方で遊んでいるか、などを見ます。役に立っていないように見えても、後でどちらかの玉が逃げてきて、価値が高くなる場合もあります。

玉の守りの堅さ、は、そのとおりですが、守備駒の効率のよさ、という考え方もできます。

手番は、もともとは次にどちらが指す番か、ということですが、どちらが主導権を握っているかという意味もあります。たとえば、「王手」をかけられた側は、必ずそれに対応しなければなりません(なので、自分が指したい手が他にあったとしても選択できない)。

これらの要素のうち何を重視するか、ということは、その局面によっても異なります。
一般に、序盤は駒の損得の要素が大きく、中盤、終盤と進むにつれて、駒の効率や手番などの価値が高くなるといわれています。

もちろん、これらにも例外はあります。

さて、将棋ソフトは、どうやって形勢を評価しているのでしょうか?

正直なところ、私にはわかりません。

ただ、将棋には過去からの莫大な指し手のデータ(棋譜と呼ばれるもの)があり、それらの指し手の先にどちらが勝ったかという結果も出ているので、解析することは不可能ではありません。
実際、今のソフトの評価能力がプロ棋士と比較してどの水準にあるかはともかく、将棋ソフトが誕生した頃と比べれば格段に進歩しているのは間違いありません。

莫大なデータがあり、その結果も出ている。
指し手のデータも勝敗の結果も、客観的なもの(というか、見る人の主観によって先手が勝ったり後手が勝ったりということはない)。
そりゃあ、時間をかければ進歩していくでしょう。


さて、ケアプランのこと。


AIがケアプラン作成 産業革新機構など新会社
(日経新聞 2017/4/14 20:08)
官民ファンドの産業革新機構は14日、人工知能(AI)を活用して介護サービス計画(ケアプラン)を提供する新会社を設立すると発表した。出資総額は15億円で、機構が最大8億円を出して筆頭株主になる。介護大手のセントケア・ホールディングや日揮、ツクイも資本参加する。
 新会社は「シーディーアイ(CDI)」。現在、ケアプランはケアマネジャーらが要介護者の状態を判断して作成している。CDIは過去のデータをAIに学習させ、要介護者に合ったケアプランを作る。介護現場の人手不足が進むなか、AIでコスト減と省力化につなげる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF14H0Q_U7A410C1EA4000/


将棋ソフトと違って、どんなケアプラン作成ソフトができるのか、まだ見当がつかないのですが、
AIに学習させるにしても、そのケアプランの結果がどうなったか、利用者や家族の満足度を客観的にデータ化するのは難しいでしょう。
たとえば要介護度が上がったか下がったか変わらなかったか、ということは客観化できるでしょうが、
そもそも要介護(支援)認定というのは、介護の手間を近似値的に表しただけなので、
それだけでケアプランの妥当性や、まして顧客満足度みたいなものを評価するのは、現段階ではほとんど無謀といえるのではないでしょうか。
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あるいは連勝より凄いこと

さて、藤井聡太四段が公式戦29連勝で、神谷八段が持っていた連勝記録を更新しました。
それも、プロデビュー(四段昇段)から負けなしで。

これはもちろん前例がないことなのですが、考え方によってはもっと凄いことがあります。

日本将棋連盟の公式サイトには、
「このサイトに掲載されている記事・イラスト・写真・商標等の無断転載を禁じます。」
と、当たり前ではありますが、(広報の観点からは)ちょっと無粋な制限事項が書いてあるので、
自分でトーナメント表を作ってみました。
せっかくなので、公式ページにあるトーナメント表とは若干レイアウトを変えてあります。



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先日の藤井四段の29連勝目は、この竜王戦本戦トーナメントの1回戦、増田四段との対局でした。
このまま勝ち進むと、(他棋戦はともかく竜王戦で)4連勝で挑戦者決定戦まで行きます。
そこで先に2勝した方が渡辺竜王と七番勝負を行うことになります。

つまり、(竜王戦で)あと10勝すれば、将棋界最高賞金といわれているタイトルを獲得し、
(考え方にもよりますが)序列第一位、といえる地位につくことになるのです。

まあ、ラスボス級が(羽生さんとか)複数、立ちふさがってくるとは思いますが・・・

今夜はトーナメント表を作っていて、AIの話までは進めなかったので、それはまたの機会に。

ゆく棋士、くる棋士

藤井四段の連勝記録で沸いた昨日、往年の名棋士の訃報が入ってきました。


将棋・大内延介九段が死去、75歳

(スポーツ報知 6/26(月)20:23配信)

 日本将棋連盟は26日、大内延介(おおうち・のぶゆき)九段が、23日に75歳で亡くなったと発表した。葬儀は近親者のみで営まれたという。「お別れの会」は7月17日、東京・渋谷区の将棋会館で行われる。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170626-00000165-sph-soci


以下、記事の続きや個人的記憶なども参考にしながら。

・振飛車党で、(当時は邪道扱いの)穴熊を駆使した豪快な気風で、怒濤流とも呼ばれた。
・六段でタイトル挑戦(1967年、王位戦)。これは当時は前例がなかった。結果は大山王位の前に敗退。
・全盛期の中原名人をあと一歩まで追い詰める(1975年、名人戦)。3勝3敗の最終局で優勢の局面から持将棋(双方入玉による引き分け)に持ち込まれ、差し直し局で敗北。
・1976年にタイトル獲得(第1期の棋王)。
・タイトル戦以外の一般棋戦の優勝も何回となく。

それ以外にも、将棋の歴史、日本将棋に至るまでの道筋の研究者として知られています。

そういえば、ずっと前に世界と日本の将棋について書いたことがありますが、
(このリンク先からの数記事)
https://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34349294.html

こういうことがわかってきたのも、大内さんなど、多くの研究者の方々のおかげでしょう。

お礼を申し上げるとともに、ご冥福をお祈りします。

天才棋士の系譜

人工知能と人間の能力との関係について考えていて(ケアプランの作成とか)、
将棋ソフトとプロ棋士との関係、と来て、さらに横道に入って、こんな表を作ってみました。


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歴代の中学生で棋士デビュー(四段昇段)した人物、というだけだと、中原十六世名人が含まれないし、
永世名人、というカテゴリーだと、話題のひふみんなどが除外されてしまうので、
規則性にこだわらず、適当にリストアップしてみました。

なお、大山・升田世代は、さすがに比較が困難なので、涙を飲んで。

早いデビューが必ずしも戦歴にはつながっていない場合もあります。
さあ、藤井四段はどのような棋士人生を送るのでしょうか。

一問一答 消費者契約法改正7

問12 アイドルとの握手券が付いたCDを大量に購入したという事例については、過量な内容の消費者契約の取消しが認められるのですか。

(答)
1.このような事例では、一般的には、消費者が自ら商品をレジに持参して購入するものと考えられます。そのような場合には、事業者から消費者に対して勧誘がなされていないことから、過量な内容の消費者契約の取消しの規定は適用されないこととなります。

2.また、仮に勧誘がなされた事例であったとしても、そのCDを発売したアイドルのファンである消費者が購入するような場合には、握手券が付いているという商品の内容や、そのアイドルのファンであるという消費者の生活の状況を考慮すれば、過量な内容の消費者契約には当たらないと判断されることが多いと考えられます。

3.ただし、そのような消費者の生活の状況等を考慮したとしても、販売されたCDの枚数が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものである場合においては、事業者がそのことを知りながら勧誘し、それによって当該消費者が契約を締結したときは、過量な内容の消費者契約の取消しの規定が適用されることになります。


問13 過量な内容の消費者契約に当たるかどうかの判断が個別の事例によって異なるとすると、セールストークが難しくなるなど、事業者の営業活動に萎縮的な効果を及ぼすことはないのですか。

(答)
1.過量な内容の消費者契約に当たるかどうかの判断は、一般的・平均的な消費者を基準として、社会通念を基に規範的に行われることとなります。

2.また、取消しが認められるのは、事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者契約の目的物の分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合に限られます。

3.したがって、要件が明確であり、事業者の予測可能性は確保されていることから、事業者の営業活動に萎縮的な効果を及ぼすことはないと考えられます。

(参考)過量な内容の消費者契約の取消しの規定が適用されないと考えられる事例
 ・インターネットの通信販売サイトで消費者自身が注文をして大量の商品を購入した事例
 ⇒ 事業者は注文を受けて商品を引き渡しているだけであり、そもそも事業者が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知りながら勧誘をしたとは通常はいえないことから、規定は適用されません。
 ・事業者が近所でも有名な大家族の一員と勘違いして、一人暮らしの消費者に対して勧誘を行った上で大量の商品を販売した事例
 ⇒ 事業者は当該消費者を大家族の一員であると思ったがゆえに大量の商品を販売しており、当該消費者が一人暮らしであることは知りませんでした。したがって、事業者が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知りながら勧誘したとはいえないことから、規定は適用されません。

(つづく・・・たぶん)

一問一答 消費者契約法改正6

問10 過量な内容の消費者契約に当たることについての事業者の認識を消費者が立証することは困難ではないのですか。

(答)
1.1人の消費者に対し、事業者が次々と必要のない商品等を販売した事例(いわゆる次々販売)では、事業者は、消費者と繰り返しやり取りをして、結果的に当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるような契約の締結について勧誘をしている以上、その過程において、当該消費者の生活の状況等について、当該事業者が何も知らないということは、通常はないと考えられます。このため、次々販売の事例であるということ自体から、事業者の認識は一定程度、推認されるものと考えられます(注1)。

(注1)また、家族や知人が過量な内容の消費者契約の締結に気付き、事業者に対して、これ以上の取引をしないように申し出る場合があります。このような場合には、事業者は遅くとも申出がなされた時点において、過量な内容の消費者契約であることを認識するに至ったと考えられることから、家族や知人の証言等も有効な立証手段となります。

2.また、同じ事業者による同様の被害が他でも発生しているという情報、具体的には、当該事業者が、捜査機関によって摘発を受けたという情報、行政処分を受けたという情報、PIO-NETにおいて同種の苦情が寄せられているという情報(注2)等も間接的ではありますが、立証手段の一つとなると考えられます。
(注2)PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)は、国民生活センターと全国の消費生活センターをネットワークで結び、消費者から消費生活センターに寄せられる消費生活に関する苦情相談情報(消費生活相談情報)の収集を行っているシステムです(昭和59年運用開始)。


問11 いわゆる次々販売の事例において、新たに締結する消費者契約と既に締結されている消費者契約の目的となるものが同種であるかどうかは、どのように判断されるのですか。

(答)
1.消費者契約の目的となるものが同種であるかどうかは、事業者の設定した区分によるのではなく、消費者契約の目的となるものの種類、性質、用途等に照らして、別の種類のものとして並行して給付を受けることが、通常行われているかどうかによって判断されるものと考えられます。

2.例えば、ネックレスとブレスレットは、いずれも身を飾るための装身具であり、具体的な種類、性質、用途等に照らしての判断とはなるものの、通常は同種であると判断されるものと考えられます。

3.また、消費者契約の目的となるものが同種であるかどうかの判断は、消費者契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるかどうかの判断(注)と同様に、一般的・平均的な消費者を基準として、社会通念を基に規範的に行われることとなります。

(注)当該消費者にとっての通常の分量等については、[1]消費者契約の目的となるものの内容及び[2]取引条件、並びに[3]事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及び[4]これについての当該消費者の認識を総合的に考慮した上で、一般的・平均的な消費者を基準として、社会通念を基に規範的に判断されます。また、当該消費者契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるかどうかについては、上述の[1]~[4]の要素を考慮した上で、一般的・平均的な消費者を基準として社会通念を基に規範的に判断されます。

(つづく)

一問一答 消費者契約法改正5

問8 当該消費者の認識を考慮することによって、認知症の高齢者が事業者に勧められたために必要であると思い、大量の商品を買わされたという事例は、対象外となることはないのですか。

(答)
1.消費者にとっての通常の分量等については、[1]消費者契約の目的となるものの内容及び[2]取引条件、並びに[3]事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及び[4]これについての当該消費者の認識を総合的に考慮した上で判断されるため、当該消費者の認識を考慮しても、それだけで認知症の高齢者が大量の商品を買わされたという事例が対象外となるわけではありません。

2.例えば、既に同級生と連絡を取れず疎遠になっている認知症の高齢者が、当該消費者の生活の状況からは客観的に存在していないにもかかわらず、何十人もの同級生が遊びに来ると思い込んだ上で、大量の食材を購入した事例においては、そもそも客観的に存在していない生活の状況についての当該消費者の認識を観念することはできません。したがって、この場合は、当該消費者にとっての通常の分量等を判断するに当たって、当該消費者の認識は考慮されないことから、通常は過量な内容の消費者契約に当たることとなると考えられます。


問9 過量な内容の消費者契約の取消しが認められるためには、事業者が過量な内容の消費者契約に当たることを知っていたことが要件とされているのはなぜですか。
(答)
1.過量な内容の消費者契約の取消しは、合理的な判断をすることができない事情がある消費者に対し、その事情につけ込んでこのような契約を締結させるという事業者の行為の悪質性に着目したものです。
2.そして、事業者が過量な内容の消費者契約であることを知らなければ、事業者が消費者の事情につけ込んだとはいえず、事業者の行為に取消しを認めるまでの悪質性はないことから、事業者の認識を要件としています。
(注)なお、消費者委員会の答申(平成28年1月7日)の別添「消費者契約法専門調査会報告書」では、以下の記載があり、事業者の認識があることを取消しの要件とすることとされています(下線は消費者庁で付したものです)。

第2 速やかに法改正を行うべき内容を含む論点
2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型
 事業者が、消費者に対して、過量契約(事業者から受ける物品、権利、役務等の給付がその日常生活において通常必要とされる分量、回数又は期間を著しく超える契約)に当たること及び当該消費者に当該過量契約の締結を必要とする特別の事情がないことを知りながら、当該過量契約の締結について勧誘し、それによって当該過量契約を締結させたような場合に、意思表示の取消しを認める規定を新たに設けることとする。


(おそらく、つづく)

一問一答 消費者契約法改正4

問6 過量な内容の消費者契約に当たるかどうかはどのように判断されることとなるのですか。

(答)
1.過量な内容の消費者契約とは、消費者契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものです。

2.当該消費者にとっての通常の分量等については、[1]消費者契約の目的となるものの内容及び[2]取引条件(注1)、並びに[3]事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及び[4]これについての当該消費者の認識(注2)を総合的に考慮した上で、一般的・平均的な消費者を基準として、社会通念を基に規範的に判断されます。

(注1)消費者契約の目的となるものの「内容」としては、性質、性能・機能・効能、重量・大きさ、用途等が考えられます。例えば、生鮮食品のようにすぐに消費しないと無価値になってしまうものは、缶詰のように比較的長期間の保存が前提とされるものと比べて、過量な内容の消費者契約に当たりやすいと考えられます。消費者契約の目的となるものの「取引条件」としては、価格、支払時期、景品類提供の有無等が考えられます。例えば、何十万円もする高価品は、100円の商品と比べて、当該消費者にとっての通常の分量等が少なくなり、過量な内容の消費者契約に当たりやすいと考えられます。
(注2)消費者の「生活の状況」には、当該消費者の生活に関するものである限り、当該消費者の職業、世帯構成人数、交友関係、趣味・嗜好、消費性向等の日常的な生活の状況のほか、たまたま友人が遊びに来る、お世話になった近所の人たちに御礼の品を配る目的があるなどの一時的な生活の状況も含まれますが、客観的に存在し得るものであることを要します。また、これについての当該消費者の「認識」とは、上述の「生活の状況」についての当該消費者自身の認識を指します。

3.また、当該消費者契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるかどうかについては、上述の[1]~[4]の要素を考慮した上で、一般的・平均的な消費者を基準として、社会通念を基に規範的に判断されます。


問7 過量な内容の消費者契約に当たるかどうかの判断に際し、消費者の生活の状況についての当該消費者の認識によって結論が左右されることとなり得る事例はどのようなものですか。

(答)
1.例えば、一人暮らしの消費者が、翌日に友人が10人遊びに来ると勘違いをして10人分の食材を購入したものの、実際に友人が遊びに来るのは1か月後であったという事例(注)が挙げられます。

(注)このような場合、事業者は、翌日に友人が10人遊びに来るかどうかについて、通常は消費者の認識に基づき判断するしかないことから、仮に消費者の勘違いであったとしても、それを前提に判断することとしないと、取引の安全を害することとなります。

2.消費者の生活の状況については、友人が遊びに来るという一時的な生活の状況も含まれますが、この事例においては、事業者が勧誘をする時点では、1か月後に友人が遊びに来るという生活の状況が、客観的には存在しています。

3.そして、消費者は、友人が遊びに来るという1か月後の客観的な生活の状況を翌日のものと認識して大量に食材を購入したものであることから、当該消費者の認識に照らせば、過量な内容の消費者契約には当たらないこととなり得る事例と考えられます。

(つづく)

一問一答 消費者契約法改正3

問5 一人暮らしでめったに外出しない消費者に対して、何十着もの着物を販売するような場合は、過量な内容の消費者契約の取消しが認められるのですか。

(答)
1.過量な内容の消費者契約に関する規定は、
・消費者契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等(注1)を著しく超えるものであることを
・勧誘の際に事業者が知っていた場合において、消費者が、その勧誘によって当該消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたときに
取り消すことができることとするものです。

(注1)消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等を指すものです。

2.設問のように、一人暮らしでめったに外出しない消費者に対して、何十着もの着物を販売する事例では、
・一人暮らしでめったに出掛けない消費者にとっては、せいぜい数着の着物を所持していれば生活をする上で足りるはずであり、何十着という分量は当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであり
・事業者が、そのことを知りながら勧誘をして販売したのであれば、取消しが認められる(注2)と考えられます。

(注2)同様に、
・消費者に対して、同じ健康器具を何台も販売する事例
・消費者に対して、摂取しきれないほどの大量の健康食品を販売する事例
においても、事業者が、当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知りながら、勧誘をして販売したのであれば、取消しが認められると考えられます。

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(ぼちぼち つづく)

一問一答 消費者契約法改正2

<過量な内容の消費者契約の取消し>
問4 過量な内容の消費者契約の取消しを認める必要性はどのようなものですか。

(答)
1.消費者契約法の施行後に高齢化が更に進展したことの影響も受け、合理的な判断をすることができない事情がある消費者に対し、事業者がその事情につけ込んで不必要なものを大量に購入させる等の消費者被害(注1)が発生しています。

(注1)例えば、呉服等の販売会社が、店舗に来訪した高齢者に対し、認知症のために財産管理能力が低下している状態を利用して、老後の生活に充てるべき資産をほとんど使ってしまうほどの着物や宝石等の商品を購入させた事案(奈良地裁平成22年7月9日消費者法ニュース86号129頁)があります。

2.このような消費者被害の救済について、これまでは公序良俗(民法第90条)や不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)といった一般的な規定に委ねられていましたが、これらの規定は要件が抽象的であり、どのような場合に適用されるかが、消費者にとって必ずしも明確ではない部分がありました。

3.そこで、消費者契約の特質を踏まえた明確な要件を定めて、過量な内容の消費者契約の取消しを認める規定を消費者契約法に設けることとしました。

4.具体的には、
・消費者契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等(注2)を著しく超えるものであることを
・勧誘の際に事業者が知っていた場合において、消費者が、その勧誘によって当該消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたときに
取り消すことができることとするものです。

(注2)消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして、当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等を指すものです。

(参考)高齢者に関する相談の増加(高齢化の伸び以上)

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(つづく)

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