五輪誘致より大事なもの(下)

前記事の続きです。

昨夜、この報道を知ったときは、とても悲しく思いました。

この時期の東京オリンピック誘致については、我が国でも、さまざまな意見があるとは思います。
ですが、それはあくまで日本国内の問題です。

私は、五輪誘致の是非、あるいはその結果にかかわらず、ずっと以前からの特別な友好国・トルコの人々の信頼を失いたくはありません。
トルコの人々の気持ちを傷つけたくありません。


また、トルコ以外のイスラム圏の人々についても同様です。
日本国内ではあまり知られていないかもしれませんが、中東などイスラム教徒の多い国では、意外に(?)親日的な人々が多いです。
東アジア情勢だけ見ていれば、日本は全世界から嫌われているかのような錯覚を起こすかもしれませんが・・・

イスラムについていえば、テロを起こそうとする人々はごく一部で、その被害にあった人々、身内など大切な人々を失ってテロを憎む人々の方が(当たり前ですが)ずっと多数派です。

世界史的に見れば、ヨーロッパのキリスト教諸国が文明のトップに出たのは、せいぜい数世紀前からのことです。
アッバース朝の都バクダードで発達した化学などの学術は、ヨーロッパなどに大きな影響を与えましたし、
第二次ウィーン包囲の失敗あたりまでは、オスマン帝国の勢威は欧州諸国を圧していました。

文明、文化、国力などというものは、波があります。
また、ある分野で進んでいる国が、他の分野では遅れている場合もあります。

仮にイスラム諸国が、互いに争うことが多いとしても、
(トルコ共和国というのは、そういう色合いが極めて薄い国だと思いますが・・・クルド人問題など火種を抱えていないわけではありません)
だからこそ、そこでの五輪開催が必要だ、という考え方もできると思います。
(古代オリンピックでは開催期間中は戦争が停止されていたという故事があります。)

ついでにいえば、イスタンブールは、五輪誘致上の問題のひとつとして、交通渋滞対策が課題になっています。
そこで、ボスポラス海峡によってヨーロッパとアジアに分かれた市街地を結ぶ海底トンネルの建設が進められているのですが、
これに日本の大成建設が関わっています。

こういうことを考えると、イスタンブールが開催を勝ち取ったとしても、それはそれで喜ばしいことではないか、とも思います。

と書くと、まあ、ご批判もあるかもしれません。

ですが、やはり、五輪の自国開催よりも大事なことはある。

私はそう思います。

都知事の今回の発言は、本当に残念でしたが、ともかく謝罪したのはよかったと思います。

今回の問題に関わらず、日本とトルコの友好が続くことを願ってやみません。
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コメント

No title

イスラム原理主義のテロがあった後、イスラム教の方々のつらい立場をみてきたので今回の発言はとても残念で仕方がないです。

私は成人してから、何度かマレーシアに行きイスラム教の文化に触れる機会がありました。
マレーシアは親日国でしたから、日本人にたいしてとても友好的です。

マレー人の友人たちも、日本の文化を
とても慈しんでいます。

トルコと日本の関係も、けっこう昔から続いています。だから、本当に残念でした。

五輪誘致以前に大切なことを忘れてしまっては
五輪を開催する意味もなくなってしまうと思っています。

No title

おっしゃるとおりです。

駐日トルコ大使館のサイトに、「皆様から寄せられたメッセージ」というページがあります。
災害時のお見舞いなど、多数の日本人からのメッセージが掲載されていますが、このたびの都知事発言報道についても、多くの日本国民から、謝罪と友好の永続とを求めるメール等が寄せられているようです。

という話はさておき。
しゅうさんはマレーシアの方々と縁がおありだったんですね。
機会があれば、そのへんの話を聴かせてください。

No title

それから、記事についての補足です。

大成建設が関わっている海底トンネルですが、鉄道用のトンネルです。
だから、道路の自動車渋滞を直接緩和するものではないかもしれませんが、鉄道で移動する人が増えれば、海峡に架かる橋を通って移動する車が減り、間接的には緩和効果が期待できるのではないかと思います。

それと、「その事業を通じて日本企業に大金が落ちるから」という理由でイスタンブールでの五輪開催を喜ぶ、という意味ではありません。
日本の技術がイスタンブール五輪の成功に貢献できるのなら、日本国内での五輪成功と同様に喜んでもいいのではないか、という意味です。

No title

(続報です。)

猪瀬知事の謝罪受け入れ=「日本との長年の友情重視」―トルコ
時事通信 5月1日(水)22時28分配信

【エルサレム時事】トルコからの報道によると、2020年夏季五輪招致を目指す東京都の猪瀬直樹知事がライバル都市のイスタンブール(トルコ)を批判した問題で、クルチ青年スポーツ相は1日までに、猪瀬知事の謝罪を受け入れる考えを示した。
その上で、クルチ・スポーツ相は「トルコと日本の人々の間で何世紀も続いてきた友情とお互いを尊重し合う心を最大限に重視している」と強調した。
同相は猪瀬知事の発言に対し、ツイッターで「発言は公正でなく悲しいことだ。オリンピックの精神に反している」と非難していた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130501-00000151-jij-m_est

No title

思い出しましたが、私、中学生時代、トルコの子と文通していたんですよねぇ。
トルコの文化とか、そういうのはよくわからないんですが、中学生なので大した語学力もなく、英語の先生に見てもらいながら、辞書を引きつつ書いた記憶があります。
自然に終わってしまいましたが、なので、トルコにはなんだか思い入れがあるんですよ。もう30年くらい前の話ですけれど。
残念でなりません。

No title

うわー、中学生で英語で文通ですか。
辞書や先生の助けがあったにしても、凄いですねぇ。

私はこういう記事を書いていても、外国語関係はさっぱりです(きっぱり)
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